本研究は、ウィーンのシュテファン大聖堂に設置されたハプスブルク家の皇帝フリードリヒ三世(1415-1493)の墓碑について、その政治的機能を検討することで、ゴシックからルネサンス期における墓碑と霊廟の機能や役割に関する再解釈を試みるものである。考察に際しては、息子である皇帝マクシミリアン一世の墓碑プロジェクトを手掛かりとした。本研究課題の最終年度である平成30年度は、第一に現地調査として、オーストリア・ハプスブルク家に加え、スペインなど関係の深い諸地域の墓碑と霊廟を対象として実施した。あわせて第二に、これまでの研究成果をまとめる過程で、墓碑に関するデータベースを作成した。 第一点目の現地調査は、本研究の主要な対象たるオーストリアに加え、ドイツ・スペイン・ポルトガルにおいても実施した。具体的な調査対象は、ザーリア朝の皇帝霊廟たるシュパイアー大聖堂(ドイツ)、皇帝カール五世以下スペイン・ハプスブルク家の霊廟となったエル・エスコリアル修道院(スペイン)、フリードリヒ三世の義親に当たるポルトガル王の墓碑が納められたバターリャ修道院(ポルトガル)などである。 第二点目のデータベースとは、これまでの研究成果に基づき、写真や墓碑形式、墓主の表象、副次人物像や紋章等の各種モティーフを網羅的に体系立てたものである。墓碑および霊廟の状況を体系的に把握することにより、その制作意図や象徴性をより客観的に捉えることができると考えた。このデータベースに基づくハプスブルク家の墓碑および霊廟に関する研究成果は、平成31年度に論文として発表予定である。
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