研究課題/領域番号 |
16K16726
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
土谷 真紀 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (80757451)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 狩野派 / 絵巻 / 地蔵縁起 / 豊臣秀次 / やまと絵 / 涅槃図 / 土佐派 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、研究計画に基づいて作品の基礎調査を主に行い、その成果と最新研究動向を踏まえた分析を行った。また、研究対象と関連する時代に作成された「仏涅槃図」に関する論文を公表した。同じく研究対象と関連するテーマの展覧会図録における作品解説を行った。平成28年度の調査作品は、「秀次公縁起絵巻」(京都・瑞泉寺蔵、16-17世紀)、「矢取地蔵縁起絵巻」(滋賀・個人蔵、1453年)である。 「秀次公縁起絵巻」については、調査の結果、室町時代末期から江戸初期にかけての画風であることが確認された。細部描写からは、この時期に盛行する洛中洛外図等に見られる都市描写と連なる表現が見出された。現在は、本絵巻の詞書の分析と、近しい画風を有する関連作例の調査へ向けて準備を進めているところである。 「矢取地蔵縁起絵巻」については、調査によって細部実見が叶ったことにより、画風をはじめ様々な知見を得ることができた。1453年という時期は、やまと絵系絵師として極めて重要な絵師である土佐光信が活躍する直前期にあたる。本絵巻を手がけた絵師は、人物の描き分けや安定した画面構成から、やまと絵の絵巻叙述の方法を知り得る者であると想定される。 今年度公表した論文「仏涅槃図」(『國華』1457号、2017年3月)では、土佐行広とその工房が関与したと想定される涅槃図について取り上げ、当該時期における土佐派の仏教絵画の事例とその広がりについて考察した。サントリー美術館編『絵巻マニア列伝』(2017年3月―5月)については、出品作品11点について、本研究課題によって得られた成果はもちろん、最新の研究動向に基づいて解説を執筆した。 平成28年度は研究対象の足固めとなる調査や基礎分析に終始したが、調査による知見は、論文執筆において非常に有益なものであった。現在上記調査作品の知見に基づいた論文執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進んでいるが、作品調査について調整に少し時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
作品調査へ向けての準備を迅速化し、さらに成果好評へ向けての検証作業を進めていく。 最新情報を踏まえた論文を速やかに公表していく。
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備考 |
【作品解説】 15白描絵料紙金光明経 第二巻断簡(目無経)、17・18狭衣物語絵巻断簡、26駒競行幸絵巻、27矢田地蔵縁起絵巻、44三条西実隆像紙形、45逍遥院実隆像、46石山寺縁起絵巻巻4、47地蔵堂草紙絵巻、48酒伝童子絵巻、51誉田宗廟縁起絵巻中巻、55硯破草紙絵巻 (サントリー美術館編『絵巻マニア列伝』展図録、2017年3月)
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