研究課題
平成29年度の実績は、次の6点に要約される。1)成果報告書の出版:前年の科研費研究課題の成果を『20世紀戦争のイメージ キュビスムからシュルレアリスムまで』としてまとめた単行本を監修し、フランスの出版社より出版した。このなかで、シュルレアリスムとキュビスムとの関係についての考察を深め、昨年度の成果に加えた新たな知見を加えることができた。2)キュビスムと古典主義:バルセロナにて開催されたピカソ国際学会で発表し、ピカソの古典主義に関する意見交換を学会の主催者・参加者たちと行った。また1月に京都大学で開催された日仏美術学会西支部例会『20世紀フランスの美術理論における文学と視覚芸術の交差』における発表をとおし、とりわけアンドレ・ロートの古典主義と造形的メタファーとの関係について検討した。3)キュビスムとレアリスム:ジュネーヴで行われた国際美術史コンソーシアムで発表者し、20世紀のレアリスムに関して参加者と議論した。4)キュビスムとシュルレアリスム:シンポジウム「もしもシュルレアリスムが美術だったなら」で白お用紙、ピカソにおける「超現実主義」について、梯子のモチーフに着目した分析を行った。5)前衛芸術と美術批評:9月にキングストン大学教授デイヴィッド・コッティントン氏を招聘し、前衛芸術における古典主義についてのワークショップを東京日仏会館にて開催した。また、トゥール大学教授ジョヴァンナ・ザッペリ氏を招聘し、イタリアの美術批評に関するワークショップを早稲田大学開催した。また6)前衛芸術と社会:11月の国際シンポジウム「ピカソと人類の美術」では、ピカソの焼き物の展示の問題を元に芸術家と社会の関係についての考察を行う発表をした。また5月に実施したマドリード出張では、ソフィア王妃芸術センターで開催されたピカソのゲルニカ展を訪問し、キュビスムと政治社会の関わりについて重要な知見を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
計画の段階では3年目に刊行する予定であった成果報告書の準備が順調に進んだため、2年目にあたる本年度に刊行することができた。また、研究の成果を複数の国際学会で発表し、今後の研究の躍進につながる議論を学会の参加者と交換することができた。また、海外からの招聘者であるジョヴァンナ・ザッペリとデイヴィッド・コッティントンとの議論もまた、社会学やフェミニスムと本研究との交差する視座を提示するものであった点で、今後の研究に新たな問題提起をもたらすものであった。
今年度は、これまでの研究成果を反映させた単著を刊行する予定である。またサラ・ウィルソン(コートールド美術史研究所)およびロミ・ゴラン(ニューヨーク市立大学)を招聘し、ワークショップを開催する。
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