本研究の目的は、七~九世紀頃のインド、八~九世紀頃の中国、九世紀以降の日本を対象として、図像学的観点から不動明王の形成・展開の様相を明らかにすることにある。 最終年度である本年度は、前年度からの調査や資料収集を継続するとともに、研究期間全体を通じて得られた成果をまとめ、公表することに重点を置いた。具体的内容は、以下の通りである。 本年度は、国内で可能な文献や画像の収集を継続し、インド調査を実施して関連作例の現状確認や写真撮影などを行った。これら国内外の調査で収集した文献・画像・写真等に基づき、インド―中国―日本における不動明王の頭髪表現の展開の様相を図像学的観点から明らかにした。中国における展開については、インドの関連作例を視野に入れつつ、『愛知学院大学文学部紀要』第四八号(2019年3月10日発行)に「不動の頭髪表現の中国的展開」と題する論文を執筆し、その成果を公表した。また、日本における展開については、アメリカ合衆国コロラド州デンバーで開催された国際学会AAS(Association for Asian Studies 2019 Annual Conference、2019年3月23日)で“A Study on the Peculiar Development of the Acalanatha's Hairstyle in Japan”と題する口頭発表を行い、その成果を公表した。 以上のように、アジア的視野から不動明王図像の形成・展開の様相の一端を明らかにし、学術論文や口頭発表を通してその成果を広く公表した。
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