研究課題/領域番号 |
16K16735
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 拓真 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (80610823)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ルネサンス美術 / 工房 / ギルランダイオ / フィレンツェ美術 / 美術批評 / ジョルジョ・ヴァザーリ / 美術家列伝 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、当初の予定に従い、関連作品の実見調査を進めるとともに、批評史的文献の精査を行った。また、夏期(8~9月)と春期(3月)の2度の現地調査を行い、関連作品の実見調査や関連資料の収集を行った。 夏期調査では、フィレンツェ、エグペルス、パリなど、また春期調査ではロンドン、フィレンツェ、ナポリなどの美術館・教会などで関連作品の調査を行ったほか、文献資料の精査を進めた。 その結果、ドメニコ・ギルランダイオおよびその工房についての批評史的観点からの研究を進展させた。その内容の一部は、「ギルランダイオ工房のイメージと実態:15世紀フィレンツェの芸術家工房」としてイタリア言語・文化研究会で口頭発表を行い、また「ギルランダイオ兄弟とその工房をめぐる言説と実態:ジョルジョ・ヴァザーリ『美術家列伝』の記述の検討を中心に」として論文化した。後者については、地中海学研究に投稿し、受理されている(平成30年度に出版予定)。これらの研究においては、工房の運営者としてのギルランダイオの姿と、近代的な芸術家としてのギルランダイオの姿が、歴史的な文脈においてどのような変遷をもって形作られたかを分析の対象とした。 また、ギルランダイオ工房に参加した親族の一員として、ベネデット・ギルランダイオに関する調査を行い、その活動を解明にしたうえで、一族としての工房運営の実態の分析に活用した。その内容は、「ダヴィデおよびベネデット・ギルランダイオの画歴と『セントルイスの画家』の同定」として美術史学会において口頭発表を行ったほか、“Ghirlandaio Brothers Reconsidered: Benedetto Ghirlandaio and the Master of the Saint Louis Madonna”としてコートルド研究所(ロンドン)でも報告を行った。この内容に関しても、現在論文の執筆を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作品の実見調査、文献資料の精査を確実に進めるとともに、国内外でその成果の発表を行っている。当初の研究計画のうち、先行研究の精査・関連作品の目録化はほぼ完了した。また批評史的文献についても、主要な文献については収集・検討を網羅的に進めている。ダヴィデ・ギルランダイオおよびベネデット・ギルランダイオについての研究の進展も順調であり、国内外で口頭および論文としての発表を進めている。その一方で、各地の美術館などのコレクションに散在した関連作品は多く、調査の過程で新たに判明した作品の実見調査にはなお一層の尽力が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って関連事例に対する分析も行い、より広い美術史的文脈のなかで研究対象を位置づけることをめざす。ヴェネツィアのベッリーニ一族など、他都市の事例も比較の対象とすることを検討する。それと同時に、関連作品の実見調査をさらに進め、作品調査に基づいた着実な分析を行う。バルトロメオ・ディ・ジョヴァンニのように、工房外部からの協力者が工房の運営にどのような役割を果たしたかも分析の対象とする。またベネデット・ギルランダイオに関する研究は、海外でも受け入れられる新知見を含んだものであり、早急の論文化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月に実施した海外調査の費用が所属機関により処理中のため計上されていないが、それを考慮すれば2017年度は概ね計画通りに使用されており、2018年度も当初の計画通りに使用する。
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