研究課題/領域番号 |
16K16736
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
鈴木 堅弘 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (80567800)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 寺社縁起絵巻 / 高僧 / 掛幅縁起絵 / 仏教美術 / 仏教説話画 / 図像学 / 地獄絵 / 江戸時代 |
研究実績の概要 |
2017年度の研究課題としては、2016年度に続き、地方寺社にて御用絵師に関する縁起絵巻のフィールド調査を実施した。くわえて、同研究にともなう研究発表・学術シンポジウムをおこなった。研究活動および実績は、以下の通りである。 1.作品調査:次の3件の近世期の御用絵師に関する寺社縁起絵巻(作品)の閲覧・撮影・実測を行った。(Ⅰ)「久保田藩御用絵師と秋田県天徳寺の曼陀羅図」(秋田県秋田市天徳寺・調査)、(Ⅱ)「福岡藩御用絵師・衣笠守弘の筆致と増福院の絵巻の比較」(福岡県宗像市増福院・調査)、(Ⅲ)「元三大師の絵巻と弘前藩御用絵師」(青森県弘前市報恩寺・調査) 2.研究発表と学術シンポジウム:2016年度の資料調査をもとに、下記の近世御用絵師に関する論文発表と学術シンポジウムを行った。(Ⅰ) 「尾張藩御用絵師・喜田華堂による「妙應寺縁起」とその後の展開‐絵伝・宿場・稲荷講‐」(『佛教文學[43号]』佛教文學会、2018年5月)、(Ⅱ)「明治画家・喜田華堂による「妙應寺縁起」とその後の展開‐絵伝・宿場・稲荷講‐」(佛教文學会シンポジウム「寺社縁起に近代はあったのか?」佛教文學会、2017年6月) 3.今後の研究成果と課題:2017年度は、当初予定していた研究課題である寺社縁起絵巻の調査が、調査先の寺院や博物館の都合により円滑に実施できなかった。そのため、急遽、弘前藩御用絵師や久保田藩御用絵師と寺院縁起絵巻との関連を探る調査をおこなった。本年度は、本研究の最終年度となるために、当初からの課題の摂津国久安寺《久安寺真名縁起絵巻》と宗像大社《氏八幡宮縁起絵巻》の現地調査から優先的に進めていき、その他の寺社縁起絵巻に関しても、随時、調査成果を論文として発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、これまでの研究計画に従い、「《妙応寺縁起絵巻》と尾張藩御用絵師・喜田華堂」のテーマに関しては、学会にて研究発表し、論文として学術誌に掲載することができた。また昨年度、予定の現地調査が実施できなかったために、当初の調査課題にくわえて、新たな諸藩御用絵師に関する寺社縁起絵巻のテーマとして「《元三大師縁起絵巻》と弘前藩御用絵師」や「久保田藩御用絵師と観心十界曼荼羅」や「江戸期の地獄絵と御用絵師」を設定した。それにしたがって、昨年度は、とくに東方地方(秋田市・弘前市)の縁起絵巻を中心に調査・撮影するにいたった。 さらに昨年度は、佛教文學会シンポジウム「寺社縁起に近代はあったのか?」(慶応大学)にて《妙応寺縁起絵巻》と喜田華堂に関する研究発表を行い、文学や宗教学の研究者と共に、本研究の課題にともなうパネルディスカッションをする機会にも恵まれた。ただし、当初課題の寺社縁起絵巻に関する調査や資料分析が遅れており、今後、積極的に現地調査や論文執筆を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本来ならば昨年度までに本研究の現地調査を終えて、その調査に関する論稿を学会誌・学術雑誌にて発表する予定であったが、昨年度は現地調査を予定通りに実施できず、当初の研究計画よりも調査や論文作成が遅れている。本年度は、秋期頃までに当初予定していた《久安寺真名縁起絵巻》、《氏八幡宮縁起絵巻》、《池辺寺縁起絵巻》に関する現地調査を終えることを目指す。くわえて、昨年度に新たな研究課題として「《元三大師縁起絵巻》と弘前藩御用絵師」を設定し、その課題に関する追加の現地調査を実施する。さらに、こちらも昨年度に新たな研究課題として「江戸期の地獄絵と御用絵師」を設定し、その課題に関する資料調査・撮影を福岡県や佐賀県など九州地域の寺社を中心に実施するつもりである。 また、本研究の総括として諸藩御用絵師と藩主に関する総論の資料を各地の図書館・資料館にて調査する。なお、昨年度に東北地方の御用絵師と寺社縁起絵巻に関する現地調査を実施したことにより、その調査に関する研究成果を論文にまとめ、『仏教芸術』(仏教芸術学会)・『美術史』(美術史学会)などに、随時、投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、2017年7月九州北部豪雨により、研究課題の「秋月藩御用絵師・齋藤秋圃」に関する福岡県朝倉市における寺社縁起絵巻の調査が実施できなかった。また「肥後国池辺寺《池辺寺縁起絵絵巻》と梶山桂谷」の研究課題では、所蔵先の熊本県立美術館の改築工事のために、資料調査が2018年度夏季以降に延期されることになった。また《氏八幡宮縁起絵巻》に関しては、宗像市宗像大社に所蔵されているが、昨年度の同市の増福院での縁絵巻調査の分析を終えてから、その成果をもとに宗像大社での資料調査をするように、当初の研究計画とは多少の変更をおこなった。 こうした事態が発生したために、2017年度の研究費に未使用額が生じた。当初の研究計画による執行額とは異なったが、研究課題や調査地などに大きな変更はない。本年度は《久安寺真名縁起絵巻》、《氏八幡宮縁起絵巻》、《池辺寺縁起絵巻》に関する所蔵先の現地調査を実施する。また本研究は、調査地にて成果報告会の実施することを目的としているが、一昨年に調査をした岐阜県関ケ原町の妙應寺にて地元報告会をおこなうことができず、そのため次年度への使用額の繰り越しが生じた。本年度において、同地の妙應寺にて研究成果報告会を実施する予定である。
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