研究課題/領域番号 |
16K16739
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
福士 雄也 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部美術室, 研究員 (50747334)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 極書 / 形式 / 差異 |
研究実績の概要 |
4か年計画のうちの初年度にあたる本年度は、京都国立博物館に収蔵される作品および京都近郊に所在する作品を中心に調査を行い、基礎データの収集を開始した。 その結果、約30件の作品及び極書双方の作者・内容について基本的な情報を整理し、目録化することができた。その際、数値データや文字情報のみならず、極書の詳細な写真撮影を進め、相互の比較考察を可能とする画像データの蓄積を行った。ただし、材質については目視による観察のみでは判断が難しいこともあり、データの項目としては除外することとした。極書の制作時期は江戸時代前期から明治時代にまで及び、その制作者も画家や鑑定家、収集家など多岐にわたる。近世という時代によるところもあるが、数として多いのは狩野派画家による極書で、書式に関しては一つの基準と見なし得るものと考えられる。珍しいと思われる例では、外国人による極書というものも調査することができ、日英二か国語で書かれた極書として非常に興味深いものであった。 まだ資料サンプル数は少ないが、同一人物による同一フォーマットの極書であっても、記された文言等に若干の相違のある例が見受けられた。こうした差異は何に由来するのか、捏造の可能性はないのか、今後研究を進めるうえで検討すべき材料を得ることができた。また、捏造とは断定できないものの、料紙の種類や筆跡等から判断して、少なくともオリジナルではない可能性のある極書も見出された。今後研究を進める中で、こうした史料の位置付けも可能となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以前に所在を確認し、調査を予定していた作品の所蔵者が移っていたケースが複数あり、当初の計画通りには調査を進めることができなかった。また、調査を進める過程で、さまざまな極書筆者のデータを漫然と集めても比較研究を進め難いことも見えてきた。そのため、たとえば狩野派など極書筆者の属性を絞ってデータを集める方が効率的と思われるが、通常そこまでの情報は実際に調査を行うまではわからない。 こうしたことから、調査作品の所在確認や選定に予想以上の時間を要し、調査件数が目標に達しなかったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
調査件数の遅れを取り戻すため、調査の頻度を上げる。また、各地で開催される展覧会において極書の情報が得られることも多いため、そうした機会を通じて極書が付属する作品の所在情報収集をさらに強化する。 特に、当面は狩野派による極書の調査を優先的に実施し、相互の共通点・差異を浮かび上がらせていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査件数が当初想定していた数に達しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ収集の件数不足を補うため、各地に出向いて調査と情報収集を重ねていく予定である。
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