研究課題/領域番号 |
16K16739
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
福士 雄也 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部美術室, 研究員 (50747334)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鑑定 / 極書 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、4年計画を1年延長し、これをさらに1年延長したため6年目となる。研究計画の1年延長は、5年目に引き続き本務多忙に伴い遅延の生じている極書データの収集と目録化を進めること、また関連する文献史料の調査を行うことを目的としたものであった。しかし、一時期に比べ状況が多少好転したとはいえ、コロナ禍により外部機関での調査は依然として慎重とならざるを得ず、これらの作業の進展は必ずしも芳しいものではない。 そのような厳しい状況ではあったが、集中的に事例を収集している狩野派による極書について、機会を得て約30件の調査を行うことができた。特に江戸時代後期の狩野派による折紙を複数件調査できたことは、これまでの調査にいっそうの厚みを加えるものであり、令和3年度の実績として意義深いものと言える。また、極書の真贋を検討する材料として重要な指標のひとつとなる印章について、狩野宗家である中橋狩野家に伝来した、これまで未紹介の印譜を調査することができた。極書にかかわる印章を判断する際の基準となることが期待されるが、その後の調査により、これに対しても慎重な検討が必要であることが判明した。現時点で、この印譜が有する資料的価値の程度は未知数であるが、しかし新たな検討材料が得られたことは重要な成果と言える。 令和2年度末に課題とした、極書の形式上における時代的変化の把握については、少しずつではあるが手がかりが得られつつある。一方で、客観的に真正のものであると判断できる、つまり基準となり得る極書を見出すことの難しさは、調査を重ねるにつれ増している感がある。この問題については引き続き課題としつつ、多くの事例を調査し相互に比較することで一定の信頼性を認めることも必要であると考えられる。 令和3年度は、以上のような研究実績およびそこから浮上した課題を確認し、次年度の考察の方向性について一定の見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が、当初計画時点では想定されていなかった業務により多忙となり、遅延が生じている。これに加え、コロナ禍によって外部機関に赴いての作品・資料調査については引き続き慎重を要する状況が続いている。当初目標としていた、平均月1回の集中的出張調査の実施は難しいが、狙いを絞った調査の実施により、数は稼げなくとも有益なデータを収集することは引き続き可能と考えられることから、研究計画をさらに1年延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は最終年度となるため、極書そのものの調査は少数とし、鑑定記録や関連史料の調査、それらに基づく考察を深め、研究の総括と今後の展開についてまとめる予定である。その際、日々充実が図られている各機関のオンラインデータベース等も活用しながら、難しい状況下にあっても可能な限り研究を推進したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)所属機関の業務が多忙となったことに加え、コロナ禍により外部機関での調査が引き続き困難な状況にあるため、調査を思うように実施することができず旅費の支出が予定を下回った。
(使用計画)研究の総括に向け、文献史料等の調査を実施するとともに、必要な資料の収集を行う予定である。
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