美術品の鑑定は、現代人にとっても馴染み深い行為だろう。では、なぜ鑑定は必要とされるのか。それは、動産である美術品には、常に真贋の問題が付きまとうからだ。鑑定書の有無は、その美術品を入手しようとする人の心理に強い影響を及ぼさずにおかない。だから、鑑定書自体が捏造されることも自然の成り行きだった。 ところが、狩野派画家が作成した鑑定書(極書)に対する研究は、これまで十分ではなく、結果、疑わしい鑑定書が資料として用いられることもあった。つまり、鑑定書の鑑定が必要なのだ。本研究はそのための基礎となる情報を提示、共有するという重要な意義がある。その先には、鑑定という文化の面白さを探る道が開けている。
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