最終年度は、ミュージアムにおける演劇創作の理論化と政策的課題の検討を研究目標とした。本研究課題では、これまで、ミュージアムの展示・教育と演劇との関わりについてのコミュニケーション論的観点からの理論的検討を行なってきた。これに基づき、新たな文化的創造のためのミュージアムコレクションの利活用、およびミュージアムにおけるコミュニケーションの創出可能性について課題を整理した。その結果導き出された、ミュージアムと「音」の関係について、今年度は重点的に考察を行った。その成果については、2020年1月に、26th Annual Japan Studies Association Conference(米国・ハワイにて開催)にて口頭発表を行なった。今後のミュージアム像として、演劇やパフォーミングアーツの創作とミュージアムコレクション活用を結びつけ、ミュージアムと利用者や利用者同士の新たなコミュニケーションを創出するためには、静粛を求めるミュージアムマナーに代表される、ミュージアムと音に関する既存の価値観の変化を促すような実践の推奨が文化政策的課題となりうる。この実践は、ミュージアムの専門家と、アーティスト等の芸術表現に関わる専門家の両者に関わる。この文化政策的課題にどのように取り組むかについては、今後の研究課題に引き継ぎ、考察をさらに深めたいと考える。
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