| 研究課題/領域番号 |
16K16745
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| 研究機関 | 東京藝術大学 |
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研究代表者 |
松浦 昇 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 非常勤講師 (80640010)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 浮世絵 / 陰影法 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は、浮世絵・版画の一次資料調査および文献調査を通じて、明治～昭和初期の日本における新たな陰影表現の確立について調査する実証研究である。具体的には、該当期間の浮世絵・版画の一次資料調査と文献調査を行い、西洋の陰影表現を絵師達が取り入れてきた実例調査と描画技法の分類、および絵師の描画意図と背景調査を行う。
本年度は、明治～昭和初期を中心にした浮世絵・版画の資料収集と文献調査を行った。
明治以降の浮世絵・版画の陰影表現を分析するために、歌川国芳から伊東深水まで師弟関係が続く玄冶店派と呼ばれる作家の作品を中心に、一次資料調査および文献調査を行い、陰影表現の変遷や特徴を調査した。また、明治初期に西洋画の陰影表現を積極的に取り入れた小林清親や、五姓田派の肖像画も平行して調査し、明治以降に創出される陰影表現の比較、分析を行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、明治以降の浮世絵・版画における西洋陰影法の影響を調査するために、玄冶店派を中心に小林清親や五姓田派を対象として、文献調査や国内外のアーカイブが公開しているデータベース調査、研究者・専門家への聞き取りから資料調査を行った。明治の美術教育の教科書においては西洋陰影法の解説に対して、江戸以前から使われてきた「隈」などの用語を使い陰影やグラデーションへの理解を橋渡していることが分かった。
①浮世絵・版画調査１として、月岡芳年以降の玄冶店派の浮世絵、肉筆画の中から影を描いた作品を調査した。夜景や障子に映る影法師など、同一のモチーフの比較によって段階的に西洋陰影法を消化していることが観察された。
②浮世絵・版画調査２として、小林清親や五姓田派の陰影表現から明治期の版画、肉筆画における西洋陰影法の取り入れ方を調査した。清親は光線画と呼ばれる影を強調した作品を多く残しており、江戸以前の陰影表現との差異が多数確認できた。五姓田派の肉筆画にも言えるが影のシルエットが明確な輪郭を持たないことが指摘できる。
③西洋陰影法資料調査として、明治の美術教科書等から西洋陰影法に言及する箇所を調査した。「陰影」とともに「隈」や「暈」などの江戸以前から使われる用語を使い西洋の陰影を説明しているが、現時点での調査範囲では、これらの用語が厳密さをもって対応してるのかまでは判明していない。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は玄冶店派から新版画を対象に、明治以降に創出された日本の陰影表現の特徴について分析を行う。同時に、同時期の文献から絵師等の陰影表現に関する言及を調査し、陰影法への態度についても分析を行う。
明治以降西洋画や写真、印刷術が日本に浸透し、陰影法も西洋の技法に大きく偏ることになった。一方で、浮世絵師や絵師は江戸以前の陰影表現を継承しながら、和洋折衷の新しい陰影表現を創出している。その変化を描画技法と思想の両面から明らかにするために、さらなる一次資料資料調査と文献調査、分析が必要である。また、これらの成果を元にして関連学会への論文投稿を行う予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、初年度のための一次資料調査・文献調査に重点を置き、その後の図版と西洋西洋陰影法の比較分析に移るまでの時間が掛かったことから、旅費・人件費の支出が少なかった。
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| 次年度使用額の使用計画 |
本年度に引き続き浮世絵・版画の一次資料調査と関連文献調査として使用する。また、研究協力者への謝金、旅費への使用を見込んでいる。
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