研究課題/領域番号 |
16K16746
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
河村 彩 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 助教 (20580707)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 構成主義 / リシツキー / グラフィックデザイン / アイソタイプ / ダダイズム |
研究実績の概要 |
当該年度はロシア国内外で刊行されたリシツキーについての先行研究の調査を行った。また2月の前半にはモスクワに2週間ほど滞在し、トレチヤコフ美術館、およびマルチメディアアートセンターでの構成主義に関する特別展を中心に資料収集を行った。これらの先行研究および資料調査を踏まえて、"Revolutionary Planes: Books and Exhibition Rooms by El Lissitzky"と題する論文を執筆し、今年度に刊行を予定している論文集『革命の旗の元でのロシア文化』に投稿した。 また、ロシア構成主義についての単著(「構成主義ーー生活と造形の組織学(仮題)」)のための調査をすすめた。リシツキーが設計した合理化された共同住宅および公共交通手段のインテリアデザイン(第3章)、「プロウン・ルーム」「抽象の部屋」「映画・写真」展などの展覧会場の設計と『諸芸術主義』『MERTZ』等のブックデザイン(第5章)、『建設のソ連邦」等の写真アルバム(第6章)それぞれのトピックに関して調査をすすめ、草稿を執筆した。 また、2月のモスクワ滞在期間にはロシア国立図書館でも調査を行い、1930年代にリシツキーがデザインした数々のフォトアルバムや記念本、グラフィック雑誌等の詳細な調査を行った。この滞在での調査の結果、とりわけソヴィエトのグラフィック・デザインにおけるアイソタイプ(ウィーン・メソッド)の導入と、アルバムのデザイン技法に関してかなりの知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度2月のモスクワにおける調査では、ロシア国立図書館のデータベース(特に出版年の古い書籍に関して)の改善と、写真撮影許可の緩和により、多くの資料を効率良く収集することができた。またこの成果により、リシツキーおよびロシア構成主義に関しての新しい知見や今後の発展的な課題を見つけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は構成主義に関する単著の執筆をすすめるのと並行して、リシツキーが組織したヨーロッパのアヴァンギャルドのネットワークに関する調査を開始する。ダダイスト、とりわけクルト・シュヴィッタースとの関係を中心に、リシシツキーの国外での活動を調査すべく、ハノーファー、ケルン、ベルリン、ウィーン等の美術館での現地調査を予定している。また、もう一人の重要な構成主義者、グスタフ・クルツィスの作品が多く収蔵されている故郷のラトヴィアの美術館での調査も予定している。 平成28年度にロシア国立図書館で行った調査で大きな進展があり、調査しきれていない資料が大量に残っているために、再度モスクワに滞在して調査を行う。 これらの調査結果は、日本ロシア文学会、表象文化論学会、美学会等の学会誌や紀要等で論文として発表することを予定している。
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