研究課題/領域番号 |
16K16748
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
川本 徹 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10772527)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アメリカ西部 / 西部劇 / マカロニ・ウエスタン / インターナショナル・ウエスタン / フロンティア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、19世紀から現在までを視野に入れて、アメリカ西部のイメージが世界に流布したプロセスを包括的に解明することにある。初年度にあたる本年度は、基礎文献の広範な渉猟につとめるとともに、おもに以下の三点についてリサーチをおこなった。1.古典期のハリウッド西部劇と、21世紀の現在ひとびとが抱いている西部劇のイメージのあいだの齟齬についての研究。アメリカ国外の西部劇がいかにこの齟齬の生成に関与したかが今後の研究の焦点のひとつとなるため、本年度中にこの齟齬の内実をクリアにできたことは大きな成果といえる。2.黒澤明監督の時代劇『七人の侍』(1954)とそのリメイクである西部劇『荒野の七人』(1960)と、そのさらなるリメイクである西部劇『マグニフィセント・セブン』(2016)の比較考察。日本の時代劇と諸外国の西部劇の相互影響関係も本研究の重要テーマであるが、そのなかでもとくに注目すべき『七人の侍』の西部劇的展開について、最新作の公開を機に包括的な再検討ができた。3.ブルガリアで撮影されたジョー・カストナー監督の『トム・ソーヤー&ハックルベリー・フィン』(2014)を中心に、アメリカ西部が舞台であるにもかかわらずヨーロッパで撮影された映画作品とその文化史的、映画史的背景の考察。1960年代・70年代のいわゆるスパゲッティ・ウエスタン(マカロニ・ウエスタン)ではなく、マーク・トウェインの19世紀小説の映画化作品を取り上げた点が特色であり、ヨーロッパにおけるアメリカ西部表象の多様性を明らかにできた。なお、1と3については次年度中に書籍と学会誌に研究成果を発表予定であり、2については論文化はまだ進んでいないものの、朝日カルチャーセンター名古屋教室での講演で研究成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、小説家ジェイムズ・フェニモア・クーパーと興行主バッファロー・ビルを中心に、19世紀のヨーロッパにおけるアメリカのフロンティア表象の受容をリサーチする予定であったが、関連文献の渉猟に思いのほか時間がかかったため、中途より、次年度以降に予定していた20世紀以降の映画作品を中心とするリサーチに切り替え、このリサーチにおいて「研究業績の概要」に記したような種々の成果を得ることができた。このようにスケジュールに多少の変更はあったものの、研究は全体としておおむね順調に進展している。とはいえ、先送りとなったジェイムズ・フェニモア・クーパーとバッファロー・ビルについての考察は、本研究課題の要をなすものであるため、次年度中には必ずなんらかの具体的な成果を出すようにつとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記したように、初年度に遂行できなかったジェイムズ・フェニモア・クーパーやバッファロー・ビルの研究にできるだけ早く着手する予定である。19世紀のヨーロッパにおける彼らの小説/演劇の受容の実態を明らかにするため、まずは同時代の言説を丁寧に読み進め、分析してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外でのリサーチを実施する予定であったが、アーカイヴに行かずともアクセスできる資料が多く見つかり、これを利用して研究を進めることができた。そのため多少の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は19世紀アメリカ西部文学・演劇とそのヨーロッパにおける受容を中心的なテーマに据えて研究を進める予定であり、そのための資料購入と海外の図書館やフィルム・アーカイヴでの調査に費用を当てる予定である。
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