本研究課題の目的は、19世紀から現在にかけて、アメリカ西部のイメージが世界に流布したプロセスを解明することである。本年度は4年計画の最終年度である。研究の集大成として、以下に挙げる三つの論考を発表した。そしてこれらのなかで、19世紀文学(ノンフィクションをふくむ)から21世紀映画まで多様なテクストを取り上げ、アメリカ西部のイメージがメディアと国・地域を越境したプロセスを具体的に跡付けた。1. 2年目に遂行した19世紀アメリカ小説『モヒカン族の最後』(1826)の映画化に関する研究の成果を、最新のアダプテーション研究書である『アメリカ文学と映画』の一章として発表。2. 3年目に遂行した女性開拓者の日記と映画『ミークス・カットオフ』(2010)に関する研究の成果を、岩波書店刊『思想』の文学特集号に発表。3. クエンティン・タランティーノの西部劇を題材に、米・伊・独の西部小説・西部劇の伝統の混淆を分析し、その成果を『ユリイカ』のタランティーノ特集号に発表。この3の論考では、よく知られた映画を例に、本研究課題のアプローチを分かりやすく示すことができた。このように最終年度はこれまで滞っていた研究成果の活字化を円滑に進めることができた。さらに、アメリカ西部のイメージの最先端を追求するために、フランス人監督ジャック・オーディアールによる特異な西部劇『ゴールデン・リバー』(2018)を分析し、その成果を日本アメリカ文学会中部支部例会で口頭発表した。一方で、オーストラリアの西部小説・西部劇に関する研究をはじめ、まだ成果発表が実現していないものも一部だが残っている。今後なるべく早い時期に発表するよう努めたい。
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