研究課題/領域番号 |
16K16749
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
遠藤 美奈 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 研究員 (80772780)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 盆踊り / エイサー / 沖縄 / 民俗芸能 / 旧盆 / アイデンティティ / 大衆芸能 |
研究実績の概要 |
本研究は、沖縄県民が近現代において国民という枠組みのなかに置かれながら、「他者」の文化を持ち、「自文化」と「他文化」をどのように実践してきたのか、芸能研究の側面から解明することを目的としている。本研究では、それらを「エイサー」と「盆踊り」に置き換え、2つの芸能が沖縄県民に果たしてきた役割を明らかにしていく。 平成29年度は、前年度に引き続き、戦前の資史料を収集し、関連記事のデータベース化をすすめた。 新聞記事では戦前から「エイサー」と「盆踊り」を同義語として用いる傾向が強いことに加え、沖縄の実演家たちもまた、沖縄芝居のなかで「エイサー」を「盆踊り」と称して題材や演目に取り入れているものがあることがわかった。 戦前の本土式盆踊りの動向については、実践の面でかなり不明な点が多いものの、1941年に八重山地方では、国民意識の醸成を目的とした側面を含みながら、農村地域における健全娯楽や作物増産を背景にして、本土式盆踊りが演じられていたことがわかった。その一方で、同じ盆踊り会場では、八重山出身の実演家らが八重山舞踊をモティーフにした新しい盆踊りを披露する様子もみられた。このように、芸能を実践する場は、社会的・政治的な目的の達成としての導入のみならず、「自文化」の創作を生み出すきっかけとなっている可能性が高いことがわかってきた。 また、現代に通じる「盆踊り」の実践として、石垣市白保ではイタシキバラ(旧盆後の邪気払い)のなかに「盆踊り」があり、民俗芸能のなかにも本土式の「盆踊り」の影響が残されていることがわかった。現代的な影響を総合的に考察するために、民俗芸能等への影響を含めながら進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では、昨年度の進捗の遅れを取り戻すために戦前の新聞記事や市町村史等の収集と分析に取り組み、概ね完了することができた。しかし、本年度予定していた戦後の新聞資料のデータベース化までは完了することができなかった。また、関連する資料調査が不十分で、とりわけ琉球政府関連資料の収集が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
①最終年度は遅れている戦後の新聞記事等資史料のデータベース構築作業および関連資料の収集を完了させる。 ②戦前に本土式盆踊りが演じられていた地域(八重山地方)で関係者を探し、その前後の展開について聞き取り調査を行う。 ③成果発表としてシンポジウムの開催を予定していたが、研究の進捗状況によってはデータベースの作成に注力することとし、論文または学会発表等のなかで公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ保存に伴う記録メディアの支出を行わなかったため、残額は次年度の購入に充てる。
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