神社仏閣に奉納された和歌―奉納和歌の研究は近年急速に進展している。だが、「奉納」とみなす基準は研究者によって様々で、時には歌人の内面に存する「思想」によって判断することも行われた。このような状況に対し、本研究では詠作状況から「奉納」を判断する手法を提唱した。その手法によって平安期の奉納和歌の事例を収集し、①「法楽和歌」よりも「奉納和歌」が用語として妥当であること、②奉納和歌の始発は、従来の指摘よりも百年以上遡り、少なくとも10世紀から日常的に行われていたこと、③11世紀に和歌奉納が多人数化・晴儀化し始め、12世紀末にかけて、社会的位置づけが変化し、様式が多様化していくことを明らかにした。
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