研究課題/領域番号 |
16K16772
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
戸塚 学 常葉大学, 教育学部, 准教授 (70633014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プルースト / 中村真一郎 / 王朝文学 / 堀辰雄 / ヴァレリー |
研究実績の概要 |
戦後作家中村真一郎の王朝小説および王朝文学に関する評論を、戦後の世界文学概念の受容という視点から論じた。中村の「世界文学」概念には、西欧文学だけでなく日本の王朝文学が含まれており、そのことが王朝文学論の論じ方や、小説『恋の泉』の中からうかがわれる。戦後における王朝文学の再発見に、「世界文学」概念が関与していることを明らかにした。この研究については、東欧文学、アメリカ文学・ロシア文学、北欧文学・ドイツ文学、中国文学、フランス文学、ラテンアメリカ文学など各国文学の研究者との共同研究として行い、世界各国における「世界文学」をめぐる概念形成の違いについても議論を行った。成果は岩波書店「文学」誌に特集「世界文学の語り方」として論考を掲載することで公開した。 また、戦前における「世界文学」概念形成の調査として、堀辰雄旧蔵書の調査を継続し、『失われた時を求めて』における書き込みのありようを明らかにした。同時に当時の作家の読書や同時代言説のありようを、菱山修三訳・ヴァレリー『海辺の墓地』、京大のドイツ文学雑誌「カスタニエン」の調査を通して明らかにした。これらの成果は雑誌「奏」にそれぞれ論考として掲載した。堀辰雄は戦前における「世界文学」概念形成の一翼を担った作家であり、堀は翻訳行為を通して自作の中に外国文学の作品の文体の特徴を取り入れ、あるいは自ら新しい特徴を加える形で新文体を作りだした。そのさまをフランスの作家ラディゲの『ドルジェル伯の舞踏会』と「聖家族」との関係に視点を置いて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究として進めている研究会の実施により、定期的に意見交換を行い、また成果のとりまとめもすみやかに行うことができた。以前から進めている堀辰雄研究についても、まとまった成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、中村真一郎については初期の『1946・文学的考察』に視点を置いて研究を進めていく。この研究については五月の学会で発表する予定である。堀辰雄については引き続き蔵書調査を継続し、さらに堀の王朝文学に関する作品についても翻訳という視点から分析し、研究成果を発表する予定である。
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