研究課題/領域番号 |
16K16772
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
戸塚 学 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (70633014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 世界文学 / 堀辰雄 / 中村真一郎 / 福永武彦 / モダニズム / 翻訳 |
研究実績の概要 |
2019年度は、各国文学研究者と連携して編集した『世界文学アンソロジー』を刊行した。本アンソロジーは、現在の視点から詩や短編を中心に「世界文学」の「アンソロジー」としてどのようなものが可能かを模索する試みとなった。かつて、日本では『世界文学全集』が流行した時代があった。本アンソロジーは、戦後の世界文学概念の浸透の持った時代性について、現代から光をあてるために、現代において「世界文学」を提示する試みである。執筆者は、作品選定や各種コラムの執筆等を通して、日本文学研究の立場から、世界文学概念の形成や日本における受容のあり方などを紹介するとともに、そのことと翻訳という行為との関わりについて述べた。ほかに、「奏」で連載を続けている堀辰雄旧蔵洋書の書き込み調査を継続した。この点については、本年度コロナ禍そのほかの影響によって、思うようには進まない点があった。このため、研究を一年間延長することとした。また日本の女性作家におけるモダニティの形成をめぐる論稿を二本発表した。「女たちのモダニティ」と題し、文体、感覚、作中人物の国籍、都市表象など様々な観点から、日本における女性のモダニズム文学の特色を明らかにしていくつもりである。これらの論稿の中では、世界文学概念受容の下地がいかなるものであったかについて述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍などの影響等により、文学館での調査などが進められず、部分的に研究計画が遅延した。だが、可能な形での資料の収集や論稿の執筆を進め、全体としてはおおむね順調に計画を履行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で、本研究については一段落する予定である。ただし、研究を進めていく中で、従来は堀辰雄など戦前のモダニズム作家を中心に進めてきた研究を、さらに拡大していく必要性を痛感しつつある。堀辰雄旧蔵洋書の調査についても、重要なプルースト等の書き込み調査は終えたものの、まだ全貌は明らかになっていない。新たにプロジェクト等を立ち上げ、研究を発展継続していく必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍そのほかの理由により、図書館や文学館等の閉館があり、調査すべき時期に調査が充分に出来ないことがあったため。改めて、出張費用や必要な資料収集のために、残額を使用して計画を履行していくつもりである。
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