研究課題/領域番号 |
16K16774
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
関本 真乃 大谷大学, 文学部, 助教 (30760011)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 諸本調査 / 書誌調査 / 苔の衣 |
研究実績の概要 |
『苔の衣』諸伝本に関する書誌・本文調査を実施し、それぞれの本文を精密に比較検討することにより、諸本の関係について従来の通説を見直して分類し、どのような書写・享受過程を経て現存する『苔の衣』諸本本文が形成されたのかを総合的に明らかにするため、本年度は、A前田家尊経閣本系統・B穂久邇文庫本系統いずれの系統に属するのか明らかでない神宮文庫本の翻字作業を、国文学研究資料館蔵のマイクロフィルムにて行い、B系統に所属することを明らかにした。 また、A系統と比較すると異同が激しいと言われるB穂久邇文庫本系統の諸本調査をすすめた。金沢大学本(4冊)・盛岡市中央公民館本(4冊)の書誌調査および写真撮影を行った。実践女子大学の黒川四冊本については書誌調査を行い、複写を入手し、翻字作業を半分程度終えた。東京大学文学部国文学研究室本(1冊零本)については、翻字作業を終わらせ、B系統島原文庫本を祖とする可能性が高いことを分析した。 そのほか、実践女子大学の黒川春村書入本の書誌調査を行い、複写を入手した。翻字作業を行ったうえで、黒川春村書入本がA系統に所属することを分析した。また、国会図書館蔵十冊本の書誌調査を行い、複写を入手し、翻字作業を一部行い、国会図書館蔵十冊本が黒川春村書き入本の写しであろうと分析した。 篠山市教育委員会本・宮内庁書陵部本二冊本・宮内庁書陵部本一冊本(1冊零本)・立命館大学図書館本については翻字作業を行った。 B系統の諸本については、あと数本の書誌調査および翻字作業を行えば、全体的に諸本の関係を分析することが可能になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神宮文庫本の翻字作業を完成し、B穂久邇文庫本系統に属することを明らかにできた。 予定していたB穂久邇文庫本系統の諸本調査を着実にすすめ、翻字作業を半ば終わらせることができた。特に、神宮文庫本・金沢大学本・盛岡市中央公民館本・黒川四冊本については、緊密な関係があるであろうことを明らかにできた。 そのほか、篠山市教育委員会本・宮内庁書陵部本二冊本・宮内庁書陵部本一冊本(1冊零本)・立命館大学図書館本については翻字作業を完成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
一部、来年度との予定を入れ替え、黒川春村書入本・黒川四冊本・国立国会図書館十冊本の調査を行ったため、天理図書館竹柏園文庫本(5冊)・天理図書館龍門文庫本・東海大学桃園文庫本(1冊零本)・宮内庁書陵部本「宇治大納言物語」(1冊)については、書誌調査を行うことができなかったので、来年度書誌調査を行い、翻字作業を完成させる。 また、伊達市開拓記念館本(4冊)・筑波大学附属図書館本(4冊)・国立公文書館内閣文庫本(4巻2冊)・国立公文書館内閣文庫本(2冊)の書誌調査を行い、翻字作業を完成させる。 そのうえで、分析を行い、諸本本文の形成過程を考察し、系統図を作成するとともに善本を解明し、校本作成の準備を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
天理図書館竹柏園文庫本(5冊)・天理図書館龍門文庫本・東海大学桃園文庫本(1冊零本)・宮内庁書陵部本「宇治大納言物語」(1冊)については、書誌調査を行うことができなかったので、旅費が発生しなかった。また、翻字作業を研究代表者のみで行ったため、謝金が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
天理図書館竹柏園文庫本(5冊)・天理図書館龍門文庫本・東海大学桃園文庫本(1冊零本)・宮内庁書陵部本「宇治大納言物語」(1冊)について書誌調査を行うとともに、 伊達市開拓記念館本(4冊)・筑波大学附属図書館本(4冊)・国立公文書館内閣文庫本(4巻2冊)・国立公文書館内閣文庫本(2冊)・国立国会図書館二冊本(2冊)・国立国会図書館十冊本(10冊)・実践女子大学常磐松文庫(1冊零本)・京都大学二冊本(2冊)の諸本調査を行う旅費として使用する。翻字作業については、研究協力者に分担してもらい、謝金を支払う。
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