芥川龍之介が編纂した英語副読本『Modern Series of English Literature』(全八巻・1924-5・興文社)について、具体的には以下の成果を出すことができた。 まず『Modern Series~』を基にした『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(柴田元幸氏との共編訳・2018・岩波書店)の刊行である。芥川が英語副読本に選んだ51篇から、邦訳のない作品を中心に20篇を選び、翻訳書を刊行した。また各作家(具体的には、オスカー・ワイルド、ロード・ダンセイニ、レディ・グレゴリー、E・A・ポー、R・L・スティーヴンソン、アンブローズ・ビアス、M・R・ジェイムズ、ブランダー・マシューズ、セント・ジョン・G・アーヴィン、H・G・ウェルズ、アーノルド・ベネット、マックス・ビアボーム、アルジャーノン・ブラックウッド、ヴィンセント・オサリヴァン、フランシス・ギルクリスト・ウッド、ステイシー・オーモニア、ベンジャミン・ローゼンブラット、E・M・グッドマン、ハリソン・ローズ、アクメッド・アブダラー)と芥川の関連についても同書内で明らかにし、芥川と英米文学の関わりについて新たな光を当てた。同書は新聞や雑誌などの各種メディアでも書評等に多数取り上げられた。 くわえて『図書』(岩波書店、2019・3)に拙稿「アンソロジスト・芥川龍之介」を寄稿し、芥川の『Modern Series~』の編纂意図に改めて迫ったほか、学術論文「芥川龍之介編 The Modern Series of English Literatureについて・補遺」(『別府大学大学院紀要』第21号、2019・3)では田端文士村記念館所蔵の序文原稿の分析や『Modern Series~』収録作品すべての出典を明らかにするなど、『Modern Series~』の基礎的研究を一通り終えることができた。
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