研究課題/領域番号 |
16K16779
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研究機関 | 長野県短期大学 |
研究代表者 |
牧 義之 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (00727737)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 検閲 / 出版 / 言論統制 / 図書館 / 文学 |
研究実績の概要 |
第1年目にあたる平成28年度には、国立国会図書館が所蔵する資料を軸に調査を行なった。具体的には、戦後GHQによって接収を受け、米国議会図書館に所蔵されている内務省および地方警察の秘密資料(マイクロフィルム化されたもの)と、戦前・戦中期に何らかの処分を受けたものが大半を占める請求記号特501、500コレクションである。特に本年度は『日本の公文書及び検閲資料(1954年以前)』(Library of Congress、1992年)などの目録を頼りにして、本課題が考察の対象とする戦前から戦後直後にかけて作成された、当時の言論取り締まりの様態を示す各府県の警察資料を多数入手することができた。今後は、これらの資料の分析を行う予定である。 関連する成果として、松本市立中央図書館および区立千代田図書館において、県立長野図書館が所蔵する検閲関係事務文書についての講演を行なった。戦前・戦中期において、地方公共図書館がどのように検閲制度を対峙していたのかを、一般向けに解説したものである。松本市での講演は、長野県内を巡回した展示「発禁 1925-1944 戦時体制下の図書館と知る自由展」に合わせたものであり、千代田図書館でのそれは、検閲資料の展示企画「検閲官-戦前の出版検閲を担った人々の仕事と横顔」の一環として行われたものである。特に後者は、聴衆が80名を超える規模の大きな催しとなった。千代田図書館での主たる展示は、個々の検閲官に関する写真や略歴などであり、申請者も検閲官の日記についての解説パネルを執筆した。それとともに、県立長野図書館の事務文書を併せて展示し、これについても解説パネルを執筆した。これまでに長野県内でのみ展示された資料が東京でも出展されたことによって、資料の価値や考察結果を広く示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立国会図書館所蔵の検閲関連資料について、おおよそ必要なものを入手することができた。今後は、これらの資料の分析によって、戦前・戦中期から戦後にかけてどのような言論統制があったのかを、具体的に考察する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、地方の公共図書館が所蔵する検閲関連事務文書の調査・発掘を行う必要がある。県立長野図書館の文書については、講演などを通じて考察結果を示す段階にまで至ることができた。今後は、第一に静岡県立中央図書館が所蔵する文書を調査・分析する予定である。既に予備的な調査は行なったが、情報を共有し得る程度の解像度による写真撮影を行なった上で、関心を持つ他の研究者の意見も交えながら、地域による図書館の特色や、当時の検閲制度への対応の相違などについて考察する。
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