研究課題/領域番号 |
16K16779
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研究機関 | 長野県短期大学 |
研究代表者 |
牧 義之 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (00727737)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 検閲 / 図書館 / 出版 / 言論統制 / 文学 |
研究実績の概要 |
第二年目にあたる平成29年度には、地方の公共図書館にある事務文書の調査、分析を中心に作業を行なった。29年4月30日と30年3月20-21日に静岡県立中央図書館(旧・葵文庫)を訪問し、『大正十四年 発売頒布禁止図書関係綴』『昭和十六年二月以降 出版関係機密綴』など6点の綴りなどを確認した。これらは廃棄寸前に当時の図書館職員が引き取ったものであり、現在は地域資料として管理されている。特に、昭和15年以降に行われた、左翼系出版物への遡及的な禁止処分に関する文書やリストが多く存在していることが確認された。また、地方警察から中央の内務省へ報告された出版警察に関するデータも綴じられ、これらの資料が葵文庫の運営に参考資料として用いられていたことが分かった。 調査の結果を、29年8月24日の「内務省委託本」研究会、30年2月4日の一橋・駿河台図書館業務資料研究会(いずれも区立千代田図書館で開催)で報告し、専門家からの意見をうかがった。特に、2月4日には資料を拾い出された職員の方をお招きし、資料の見方や当方の誤りについて直接ご意見をうかがうことができ、資料の真価を見極めるうえで重要な機会を得た。 資料の調査を踏まえて、29年12月2日の「日本出版学会 2017年度秋季研究発表会」(中京大学)のシンポジウム「出版史研究の史料とその方法」に登壇し、「あるかどうか分からない史料と向き合う」と題して、一般的なOPACでは探し出せない文献・資料の探し方や活用方法について話した。また、30年1月26日の「早稲田大学国際日本学拠点「国際検閲ワークショップ 第二部 若手研究者によるラウンド・テーブル 検閲と文学研究の現在」に登壇し、「戦前・戦中期の出版検閲と図書館との関係について―事務文書から読み解く―」と題して、地方の図書館が検閲制度とどのように対峙していたのかについて、資料から読み解けた事項を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、各地域の歴史がある図書館に事務文書が存在しているかどうかを確認しているところである。本務校がある長野県内では県立長野図書館をはじめ、伊那市創造館、小諸図書館の資料を確認したが、今後も資料の発掘、調査を進めて行く方針である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も各地域の図書館資料の調査を進めつつ、地域ごとの通知文の相違や被処分図書の取り扱い方など、結果を踏まえた比較を行なっていく予定である。特に、長野県内の地域図書館に断片的に残されている資料を衝き合わせながら、中央図書館であった県立長野図書館からの指示の受け取り方、管轄警察署との折衝などに観点を絞って、図書館と検閲制度との関係性を探ってみたいと考えている。
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