研究課題/領域番号 |
16K16788
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研究機関 | 敬和学園大学 |
研究代表者 |
荒木 陽子 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (90511543)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アトランティック・カナダ / エコクリティシズム / ポスト・インダストリアル / カナダ文学 / デイヴィッド・アダムズ・リチャーズ |
研究実績の概要 |
平成28年度は、文献研究を通してアトランティック・カナダ文学とエコクリティシズム理論の理解に努めた。特に、旧来のパストラル・イメージの崩壊とポスト・インダストリアルイメージの台頭という視点から、アトランティック・カナダの文学・映像の研究に努め、研究発表(国外2回、国内1回)、研究論文1本、共著(平成28年5月出版予定)にまとめた。 特に5・6月に行われたアトランティック・カナダ・スタディーズ・カンファレンス、およびChLAカンファレンスにおいては、モンゴメリ作品が作り出したアトランティックカナダのイメージを題材として、アトランティック・カナダの田園調イメージの日本における利用と再生産について発表を行い、好評を得た。また、同大会への参加により、関連分野の研究者との交流を深め、本研究の一環として開催予定のシンポジウムへの協力要請を行うことができた。(だだ、大変残念なことに、現代アトランティックカナダ文学研究の第一人者であり、本研究にも協力いただく予定であった、ハーブ・ワイル氏は昨年7月に急死された。) 6月に行われた日本カナダ学会の年次大会におけるシンポジウムでは、旧来アトランティック・カナダにしばしば付帯するパストラル・イメージを意図的に利用しながら、それを転倒する、現代アトランティック・カナダの映像作品『トレイラーパーク・ボーイズ』と『ジャスト・パッシング・スルー』を紹介し、のちに『カナダ文学研究』第24号に発表した。 本研究が中心に据える予定のリチャーズの小説の作品研究は、当該年度中は、定期刊の学術雑誌に掲載された、先行研究の調査が中心となった。所属機関の変更のため、まとまった時間を必要とするMercy Among the Childrenの精読・訳出を、年度中に終了することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は年度途中で所属機関の移動が発生した。そのため、特に前期に関しては、予算の執行を伴う研究を積極的に進めることができなかった。また、後期は移動先の研究機関に、前所属機関で使用していた設備(PCやプリンター、ビデオカメラ)が配備されておらず、それらを購入するところから研究を始めなければならなかった。そのうえ、同居する父親が要介護となり、想定した研究の時間が取れなかった。そのため、予定通りに研究が進んだとは言えない。 また、研究やシンポジウムの人選などで協力を得る予定であった、ハーブ・ワイル博士が急死し、ショーシャナ・ギャンツ博士は昨年度妊娠・出産したため、この点も今後の研究に様々な影響を及ぼす可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、昨年度の研究成果の一部として、「アリステア・マクラウドと環境に関する一考察--故郷はいつもそこにあるのか」を『エコクリティシズムの波を乗り越えて:人新世の地球を生きる』(共著、音羽書房鶴見書店、2017出版予定)に発表する。 加えて、遅れているリチャーズ作品の精読・訳出を進め、6月の日本カナダ学会年次大会のシンポジウムで発表し、その後論文化することを目指す。また7月にカナダで行われるトマス・ラッドール・シンポジウムでも、日本におけるアトランティック・カナダのイメージに関する発表を行い、論文化し、研究をすすめてゆきたい。また、リチャーズ小説については、訳出が終了し次第、出版社を探す予定である。 また、渡航の機会を利用して、最終年度におけるシンポジウム演者の人選、依頼、研究成果の書籍としての出版等も計画的に進めてゆきたい。シンポジウムにはリチャーズ自身を招へいすることが当初予定であった。しかし無理な場合、やはり同地域の作家および研究者で、環境意識も高いジョージ・エリオット・クラーク、アレクザンダー・マクラウド、さらには類似するなテーマで小説を書くリサ・ムーアらも、演者の候補として考え、7月の渡航の機会にアプローチしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機関の変更等で、研究の実施が滞ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度購入予定だった書籍で必要なものは購入する。当初購入予定だった書籍の一部は、現所属機関に所蔵されているたため、購入の必要がなくなったものもある。一方で、研究機関の移動で、新たに必要となった機材(例えば研究発表用のラップトップPCやカメラ、ソフトウェアなど)を購入するために充てるなど、計画的に使いたい。
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