研究課題/領域番号 |
16K16791
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
山本 洋平 明治大学, 理工学部, 専任講師 (40646824)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウィルダネス / 環境文学 / ソロー / ウィラ・キャザー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、本研究の目的は、アメリカン・ルネサンス文学における「ウィルダネス(wilderness)」表象を批判的に分析し、系譜的に論述することである。前年度までと同様、ソローとメルヴルに関する資料の収集・調査を継続し、特に1850年代の奴隷制をめぐる議論とネイチャーライティングの芽生えとがどのような関係にあるのかという問題系を、文学と政治の関係からとらえるべく資料の調査を進めつつ、当該年度では、「ウィルダネス表象」がいかに19世紀後半から20世紀前半にかけての自然主義や地方主義文学からモダニズムの語りの問題へと接続するか、またあくまで東部の作家であったソローの文学が、どのように西部の作家へと受け継がれていくのかという問題に焦点をあてた。その過程においては、中西部や南西部の作家群の洗い出しを進め、系譜的かつ環境史的な軸に据え直すことで本研究の総括へと準備を進めている。 具体的な成果として集中的に考察をすすめたウィラ・キャザーにかんする論考を発表した。論文としては「失われた学費―ウィラ・キャザー「オールド・ミセス・ハリス」と左派批評」(山口和彦、中谷崇, 編『揺れ動く〈保守〉現代アメリカ文学と社会』春風社,2018年9月, pp. 73-98)を刊行し、研究発表としてはアメリカ・ネブラスカ州における63rd annual Willa Cather Spring Conferenceにおいて"Willa Cather’s Frontier Rhetoric"を発表し、本研究課題につながるコメントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の関心がアメリカン・ルネサンス以降の「系譜」に移りすぎたことで、19世紀後半以降の考察に時間が割かれすぎてしまった。最終年度は19世紀半ばを基軸に戻す必要があると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度にあたる2019年度は、ウィルダネスをキーワードとした環境文学論を体系的にまとめていく段階に入る。そのためには、いささか疎かになっているメルヴィル研究を進めつつ、アメリカン・ルネサンスから19世紀後半以降の中・南西部文学の接点をさぐる総論的な視点も導入する。その過程においては、環境文学およびウィルダネスの概念を揺さぶる必要があるが、その際、セアラ・オーン・ジュエット、メアリー・オースティン、ウィラ・キャザーという女性作家の系譜を浮きぼりにすることがポイントになってくるという直観的な見通しを立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に見込まれる学会発表のための渡航費を考慮に入れたため。
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