これまでわが国では、19世紀末の象徴主義は、おもに作家論の枠組みから検討されていた。本研究の学術的意義は、象徴派の実践を、新たに集団性の概念から読みといた点にある。象徴派の作家が創刊した雑誌に注目することで、この時代の文芸に、グループや集団表象の問題が顕在していることを、論文や発表を通じて明らかにした。とくに1890年代の群小作家たちは、文芸誌内の力関係やそこで共有された美学を検討することで、その存在意義を多角的に理解することができるのである。本研究の社会的意義は、フランス19世紀末の文芸を、雑誌文化との関係から考察することで、新しい文化史の一側面を紹介することができた点にある。
|