平成30年度の実績としては以下の3点が挙げられる。 (1)本研究で取り上げている作家ジュディット・ゴーチエの没後百年を記念し、Yvan Daniel教授(ラ・ロシェル大学)が中心となって編集されている論集に「日本におけるジュディット・ゴーチエの作品―死と再生」(フランス語論文)が掲載されることが決定した(すでに論文を提出済みで、刊行は2019年3-4月の予定であるが、今のところやや遅れている)。この論文では、本研究で扱った日本を主題とする全9作品の生成過程や相互関連性を明らかにし、さらにこれらの作品を現代の日本および日仏文化交流においていかに生かし得るかを論じた。本作家の研究はフランス本国でも少なく、その研究史において重要な位置付けとなる論集に日本を代表して参加し、作品における日本のテーマの特色を紹介できたことに意義があった。 (2)昨年から続けてきた、本作家の作品における「国生み神話」に関する記述や表現方法、先行する国生み神話解釈との関連性の調査の結果を、論文「欧米諸国における国生み神話の解釈の変遷と日本のイメージ形成」にまとめ、社会芸術学会紀要『社藝堂』に投稿した結果、査読を経て掲載されることが決定した(現在校正中)。 (3)今後もさらに、本作家の作品を含む欧米諸国における日本関連書籍に記された日本の伝統文化の研究を行う予定であり、本年度はそれに必要な資料を渡仏して収集することができた。こうした研究を継続し、日本の伝統文化に対する外からの視点を歴史的に、かつ比較文化・比較文学的視点から明らかにすることで、現代の日本における伝統文化理解を刷新していくことを目指している。
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