研究課題/領域番号 |
16K16803
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 潤 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (50613098)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドイツ中世文学 / 歴史意識 / 作者性 / 英雄叙事詩 / 独文学 |
研究実績の概要 |
前年度は『ニーベルンゲンの歌』および『ニーベルンゲンの哀歌』をはじめとするドイツ中世英雄叙事詩が作品成立時に持ちえた歴史性や、近代での再発見以降ドイツ・オーストリアの歴史意識およびナショナリズムに与えた影響に関するこれまでの研究成果を国内外に発信したが、本年度はさらにこれまでの研究成果の一端を共著という形で上梓した(「作者と名前―ドイツ盛期中世俗語文芸における作者」、前田佳一編『固有名の詩学』19-41頁、法政大学出版局、2019年)。また、国内外の研究者をゲストに招聘し、国際コロキウム"Autorschaft und Autorkonzept"(「作者性と作者コンセプト」)を2019年3月15-16日に主宰した。当コロキウムでは"Die Wahrheit des Erzaelten. Zu Formen der Autoritaet in der mittelhochdeutschen Epik"(「語られたことの真実性.中高ドイツ語叙事詩における作者性の形について」)と題した口頭発表を行い、古代から中世に至るまでの作者概念とそれと関連するテクストの真実性保証のレトリックの変遷を検証し、中世文芸における作者コンセプトの内実を明らかにすることを試みた。 さらに、昨年度より引き続き歴史的ディートリヒ叙事詩『ディートリヒの逃亡』および『ラヴェンナの戦い』、15世紀以降に成立した英雄本に収録されている「英雄本散文」にみられる歴史意識についての研究を進めており、本年度までに得られた成果を2019年6月の日本独文学会春季研究発表会コロキウムにおいて公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度に関しては、これまでの研究成果を発表し議論の対象とするため、国際コロキウムを開催することができたことが最大の成果であった。このコロキウムで得られた知見をもとにさらに論考を深めてゆくことが必要だが、招聘研究者の都合により開催が3月下旬となったため、コロキウムの成果を論考に反映させるには今少しの時間が必要である。また、さらなる考察のために必要となる文献を収集するための渡独をコロキウム後に行う予定であったが、これも上述の日程の関係で2019年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はすでに6月の日本独文学会春季研究発表会で開催されるシンポジウム「フラグメントの諸相―文化的実践としての」のパネリストの一人としての発表が決まっており、「「歴史」の断片―ドイツ中世英雄叙事詩のフラグメント性」の論題のもと、これまで研究を進めてきた中世盛期から後期にかけての英雄叙事詩の持つ歴史性についての報告を行う予定である。3月のコロキウムおよびこのシンポジウムで得られた成果をもとに論文を執筆し、学会誌への投稿を予定している。また、この論文執筆のための資料収集およびドイツの研究者からアドヴァイスを受けるため、夏期に10日間程度の渡独を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
企画していた国際コロキウムが、招聘研究者の都合により実施時期が遅れ、3月中旬の開催となった。そのため、コロキウム実施後に予定していた、コロキウムの成果を反映させ、より精緻な研究成果を達成するために必要不可欠な、渡独してのさらなる資料調査や参考文献の購入などを2018年度内に行うことが困難となったため、延長申請を行い2019年度に実施することとした。
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