研究課題/領域番号 |
16K16807
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
志々見 剛 学習院大学, 文学部, 准教授 (40738069)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ルネサンス / 歴史論 / トゥキュディデス |
研究実績の概要 |
これまでのところ、本研究においては、古代のギリシャ語歴史家がルネサンス期のフランスの歴史論にどのようなインパクトをもたらしたのかを主な研究対象として考察してきた。この時期のフランスの歴史論というのが、方法においても対象においても、それ以降の歴史論をも方向付けるような。一つの重要な画期をなしていたからである。とはいえ、このような研究においては、例えばロレンツォ・ヴァッラがラテン語に訳したヘロドトスとトゥキュディデスが典型的なように、それ以前の数世紀のイタリアの状況というものが、無視できないものであった。 ここ数年間は資料の収集と読解とに重点を置いていたが、2019年度は、それに加えて、これまで継続してきた研究のひとつの総括として、『ロンサール研究』32号(2019)に、「16世紀後半のフランスの歴史論におけるトゥキュディデス」と題する論考を寄稿した。 ここにおいては、歴史論における画期といえる16世紀後半のフランスにおいて、アドリアン・トゥルネブ「トゥキュディデスへの序文」、ジャン・ボダン『歴史の方法』、アンリ・エチエンヌの二つの「ヘロドトス弁護」(ラテン語、フランス語)、アンリ・ランスロ・ド・ラ・ポプリニエ『歴史の歴史』を対象として、ルネサンスのフランスの歴史論の中でトゥキュディデスおよびトゥキュディデス論――キケロ、ルキアノス、ハリカルナスのディオニシウスなど――がどのように受容され、あるいは批判されているかを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
外的な、ないしは個人的な事情によって、当初予定していた研究時間が十分に確保できないことがあったり、資料の入手について幾分の遅延が生じたりといったことがあって、研究の進捗が、当初の予定に比して、やや停滞する時期があった。 また、研究内容に関しては、ポリュビオスの受容についての分析が、当初の予想ほどには深まらない(先行研究の域を超ええない)という問題に突き当たった。 とはいえ、それ以外の部分については、いくらか遅滞があるとはいえ、順調に研究は進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初から想定していたハリカルナスのディオニシウスやルキアノス(の歴史論)といった古典作家に加え、シチリアのディオドロスやアッリアノス、ディオ・カッシウスなどの受容についても、個別的なトピックを設定すれば、研究対象に含めうるのではないか(あるいは、含めるべきではないか)と考えるに至った。 あまり風呂敷を広げすぎるべきではないが、何らかの限定的なトピックを設定することによって、これらの古代の歴史家も含めて、ルネサンス期フランスの歴史論において古代ギリシャの歴史家の受容がもたらしたインパクトの大きさについて、一定の総括ができるのではないかと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究上必要な書籍を入手するのに際し、とりわけ古書や稀覯本など、なかなか円滑に進まないところがあった。
|