本課題は、従来、謝氏に代表される中国南朝の貴族文学が、その後の中国詩文の発展にどのような影響を与えたのか、また南朝期に形成された詩の題材や表現が、唐詩以降どのように定着し展開してゆくのか、という内容について、未だ体系的な研究がなされていないことを問題視し、補助期間を通して、南朝貴族の中でも特に南斉の謝チョウ(月+兆)を中心に据え、その文学が後世の詩人によってどのように解釈・評価され、表現として展開してゆくのかについて分析を行い、中国古典詩の受容と継承の様相を明らかにしてきた。 最終年度にあたる平成30年度は、過去の研究業績を整理した上で不足を補った。特に、謝チョウ(月+兆)の後世における影響を考える上で不可欠となる盛唐の李白との関連に着眼し、これにかかわる研究課題を進めた。具体的には、2018年10月に刊行された『中唐文学会報』(中唐文学会)第25輯に論文「敬亭山の印象 ―謝チョウ(月+兆)から李白へ―」を投稿し、掲載された。また2018年10月23日~10月26日に中国四川省江油市で李白文化ハイエンドフォーラム(李白文化高端論壇)が開催され、これに出席した。会議においては、代表者講演として「日本における李白文化の広まり(李白文化在日本的伝播影響)」と題して発表を行い、本会議では「李白の文学地理に対する開拓(李白対文学地理的開拓)」と題して研究発表を行った。研究成果はいずれも『李白文化高端論壇論文資料集』に掲載された。また、会議の参加報告として、2018年12月に刊行された『中国詩文論叢』(中国詩文研究会)第37輯に学会参加報告「四川省江油市李白文化ハイエンドフォーラムに参加して」を投稿した。 今年度の研究業績をもって、研究課題に対しまとまった成果を得ることができた。次年度は、日本学術振興会の研究成果公開促進費を利用し、得られた研究成果を学術図書として出版刊行する予定である。
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