研究課題/領域番号 |
16K16814
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
秋草 俊一郎 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 准教授 (70734896)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 翻訳 / 出版 / 正典化 / 亡命 / 移民 |
研究実績の概要 |
ナボコフ関連の資料調査、整理、執筆を中心に研究をすすめた。4月にインディアナ大学から『エスクァイア』の編集者ゴードン・リッシュとナボコフの書簡をとりよせることができた。9月にニューヨーク公共図書館バーグコレクションにて資料調査をおこない、ナボコフと出版社ニューディレクションズについての情報を集めることができた。同時に執筆をおこない、2018年度刊行予定の単著のための準備をすすめた。 直接的な研究成果として、「科学の興奮と詩の精密さ――ウラジーミル・ナボコフの文学」が共著書『知のフィールドガイド 分断された時代を生きる』(白水社)に収録された。それだけでなく、「ナボコフは世界文学か? 亡命・二言語使用・翻訳」が『すばる』2017年11月号に掲載された。 5月には駒澤大学で開催された日本ナボコフ協会2017年度大会で後藤篤との対談「ナボコフのエッセイ」をおこなった。また8月には日本大学桜門会館にて特別講演「文学の値打ち――古書店のカタログ、オークション、死後出版――ナボコフの場合」をおこない、ナボコフの正典化と商品化についてまとめた。10月には名古屋大学で行われた日本仏文学会のワークショップにて「亡命の傷――ナボコフの場合」をおこなった。3月には明治学院大学言語文化研究所主催のシンポジウム 『トランスレーション・アダプテーション・インターテクスチュアリティ』 」において講演「ナボコフの『翻訳』を再考する――亡命・二言語使用・自己翻訳」をおこない、ナボコフの英語作家への転身が亡命ロシア文学界にあたえた影響について報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
資料調査についてはおおむね順調である。9月におこなった出張により、ニューヨーク公共図書館のニューディレクションズおよびその創業者ジェイムズ・ロフリン、あるいはマグロウヒル出版、『タイムズ』誌とウラジーミル・ナボコフ、ヴェラ・ナボコフの関連書簡をほぼ調査し終えることができた。4月に、『エスクァイア』誌の編集者ゴードン・リッシュとナボコフの書簡をインディアナ大学から取り寄せることもできた。 研究内容の公開・出版についても進展があった。ナボコフと科学について考察した「科学の興奮と詩の精密さ――ウラジーミル・ナボコフの文学」や、ナボコフと世界文学について考察した「ナボコフは世界文学か? 亡命・二言語使用・翻訳」を媒体に発表することができた。 それだけでなく本研究の実質的なまとめとなる2018年度に刊行予定の単著について、八割がた書き進め、出版のめどをほぼつけることができた。 3月におこなわれたシンポジウムでは「ナボコフの翻訳を再考する」と題した講演をおこない、ナボコフ研究と翻訳研究の接点について現在までの研究を整理し、結合することができた。 上記のことから当初の想定以上に研究が進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査を予定していた海外の大学のうち、有償でアーカイヴ資料の複写を郵送してくれる大学が判明したため、時間・費用の節約の観点からその利用を今後も検討したい。 主に出版社との関係性を調査していた初年度であったが、研究が大幅に進展し、当初予期したかなりの部分を調査し、成果として出版できたことを考え、研究の拡張をおこないたい。具体的には、出版・流通にくわえ、それを成立させるカノン化の条件である。その ため、ナボコフが世界文学としてカノン化するため、初期に大きな役割を果たした、伝記作家アンドルー・フィールドとナボコフの関係について調査をおこないたい。また、『ニューヨーカー』の編集者キャサリン・ホワイトとの書簡を調査したい。 総合的な資料調査の便益から考えると、依然としてニューヨーク公共図書館バーグコレクションが調査対象の第一候補ではあるが、今後の調査の発展を考え、ブリンマー大学なども調査の視野に入れたい。 今年度の主だった国外の学会のうち、MLAがシカゴ(1月)、ASEEESがボストン(12月)、ACLAがワシントンDCだった(3月)。予定があえば参加を検討したい。国内学会としては、6月の比較文学会の全国大会、秋の日本通訳翻訳学会全国大会、11月の日本ナボコフ協会研究会、日本ロシア文学会、世界文学CLN研究会がおもな国内出張の候補になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)ほぼ計画通り研究費を使用することができたが、一部購入を予定した研究図書の刊行が遅れたため、発注を次年度にまわすことにした。 (使用計画)消耗品費にあてる。
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