研究課題/領域番号 |
16K16815
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
堀口 大樹 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (50724077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 接頭辞付加 / 接尾辞付加 / 文体 / ロシア語 / ラトビア語 |
研究実績の概要 |
借用語動詞の接辞付加について、ロシア語とラトビア語を例に分析を行った。とりわけ、ロシア語学ではこれまで完了化の接頭辞付加の記述はなされてきたが、不完了化の接尾辞付加はその生産性の低さゆえに、注目されてこなかった。そこで不完了化の接尾辞付加の量的・質的分析を行った。その結果、第一次不完了化よりも、語彙的意味を変える接頭辞が付加されてできた完了体の動詞に対して行われる第二次不完了化の方が生産的に行われることを明らかにした(論文2、発表2)。ラトビア語の借用語動詞の研究では、基動詞と接頭辞動詞の使用件数に注目した研究を行った。大部分の動詞では、接頭辞動詞よりも基動詞の方が使用件数が多いが、その逆のパターンで、基動詞よりも接頭辞動詞の方が使用件数が多い動詞を分析した。その理由には、基動詞が古風であること、文体的に有標であることのほか、接頭辞動詞の接頭辞が語彙化していることや、特定の接頭辞と接尾辞が名詞の語基に同時に付加される接頭辞・接尾辞付加(confixation)であることを明らかにした(発表3)。 その他、ロシア語とラトビア語の借用語の合成語の対照研究を行った。両言語ともにこのタイプの語形成は活発に行われていることを示した(論文4, 論文5)。 近年のインターネット上で見られるロシア語のハイフンの使用を扱った。類義語の動詞をハイフンでつなぐことで、冗長ではあるものの、確実に意味を伝えるための話者の努力であること、本来音声言語に特徴的な言い加えの減少が、書記言語にも現れていることを示した(論文1、発表1)。 またロシア語における語形成の言葉遊び的側面の観点から、接頭辞pere-「過」とnedo-「不足」の組み合わせであるperenedo-とnedopere-を持つ派生語の分析を行った(論文3)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題の中心である借用語の接辞付加において、ロシア語学で記述されてこなかった接尾辞付加に着目をした研究がとりわけ進み、ロシア語学の国際的な学術誌に論文が掲載された。 また、ハイフンといった約物を使用した語形成という当初予定していなかった研究テーマに取り組むことで、音声言語による書記言語への影響を示唆できた。 本研究課題に関連して、ロシアの研究者との共同研究である借用語の名詞の語形成という新しいテーマを始めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、借用語の動詞の接辞付加の質的・量的分析を行うほか、ハイフン以外の約物を使用した語形成や、動詞の範疇にとどまらず、名詞や形容詞といった別の品詞の借用語の語形成の動的側面を明らかにすることが期待される。
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