研究課題/領域番号 |
16K16820
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
八木 堅二 国士舘大学, 政経学部, 講師 (60771102)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 言語地理学 / 中国語方言 / 韻律 / 言語類型地理論 |
研究実績の概要 |
言語地理学的研究においては、今年度は昨年データを入力した軽声・児化・声調体系等について分析を加えた。児化は山西省を中心とした頻度地図を作製し、山西省内で児化が伝播する過程を考察した。声調体系については音声的声調数の地図と音韻的声調数の地図を作製したが、音声的声調数の地図では既存の地図の二倍以上の地点密度の地図を作製し、方言間の連続性がより明瞭な形で示された。音韻的声調数の地図は今まで描かれたことはなかったが、声調の体系性を考察する上で不可欠のものであり、近隣言語との連続性を考察する上でも意義がある。音声的声調数の地図と音韻的声調数の地図の比較では呉語や湘語といった長江中流域方言における違いが明瞭に示された。これらの地図は、研究会や学会等において発表し、さらに補充入力などを行った。 方言調査おいては、北方方言の例として運城・西安・成都・開封・楊州方言の調査を行い、対照のための南方方言の例として温州・瑞安・汾宜方言の調査を行った。西安方言ではインフォーマントに恵まれたため世代差調査に着手する事ができた。また、方言音声資料(現代漢語方言音庫および調査資料)について、praatを用いたアノテーションを行い、音韻・音響分析やPVI分析に着手した。その他、韻律研究の類型地理論的研究の現代的な意義や現在の課題を明らかにするために、先行研究を整理した上で、特に橋本萬太郎の学説について、WALSや漢語方言地図集、漢語方言解釈地図等を踏まえた検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語地図については、おおむね予定通り入力・分析・発表を行っている。 調査については、西安方言などでは世代間のデータを収集することができ、北方の主要方言についても調査が進んでいる。さらに南方方言の調査も行うことができ、順調に調査が進んでいる。 音響音韻分析についてもデータの入力はほぼ完了し、今年度分析に移ることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の研究計画に基づき研究を進めていく予定である。言語地図については、次年度に軽声の地図と子音体系の地図について作図と分析・発表を行い、声調数や音節数といった他項目との比較を通じて北方方言の韻律構造の変遷を明らかにしていきたい。また、既存の方言資料と調査資料に基づく音響・音韻・PVI値等の分析を行う。さらに言語類型論的視野から研究を総括し、論文として発表する。それらと並行して、今後南方方言や周辺言語との比較を範疇にいれながら引き続き調査を行っていく。
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