研究課題/領域番号 |
16K16822
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
木島 愛 新潟大学, 教育・学生支援機構, 非常勤講師 (40767563)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 凝結表現 / 知覚動詞 / 語彙文法理論 / 日仏対照言語学 / 辞書記述 |
研究実績の概要 |
平成28年度はフランス語の知覚動詞の中でも,視覚を表すvoir (見える/見る) を取り上げ,辞書記述の精査,コーパスとの比較を行い,問題点として見えてきた表現を取り上げ,個別に分析を行った.この成果として,論文2本を執筆し,フランスにおいて口頭発表を行った. 具体的には,仏和および仏仏辞書17冊におけるvoirが使用される凝結表現 (慣用表現,定表現として記載のあるもの) を比較対照した.その結果を踏まえ,コーパス (20世紀以降の小説,約122万2千語) における実際の使用との比較分析を行った. まず,voirの凝結表現としても記載のある不定詞構文を取り上げ,統辞的意味的観点からの分析をして論文を執筆し,次に,voirが用いられる凝結表現の中でも,辞書における記載方法に顕著な差があるn’avoir rien a voirという表現に着目し,Gaston Grossが提唱している語彙文法理論 (lexique grammaire) における基準を適用し,実例に変形操作などを加え,この表現の複雑さの解明を試み,論文として発表した. また,語彙文法理論を提唱しているパリ13大学LDI研究所において,日本語とフランス語の視覚動詞に関する口頭発表,フランシュ・コンテ大学(仏国)において,視覚動詞voirに関する口頭発表を行った.さらに,LDI研究所から研究者を招いて,講演会を開催した.凝結表現に関するデータベース構築を目指している研究者グループとの交流を行うことで,自身の研究結果を反映する手段を得ることができ,さらに,日本語とフランス語を始めとするヨーロッパの言語(スペイン語,イタリア語,ポルトガル語,ポーランド語)の凝結表現を比較するプロジェクトに研究成果を反映することが可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚を表すvoirに関しては,辞書記述の精査,コーパスとの比較,そこから特定の凝結表現に関する詳細な分析を行うことができた.また,視覚を表すもう一つの動詞regarderに関しても,辞書記述の精査を開始した. LDI研究所の研究者を招いて講演を行ったことで,LDI研究所との連携も深まり,今後の研究に関する協力を得られる準備が整った.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,視覚を表す動詞regarderに関する辞書記述とコーパスにおける実際の使用を比較分析する.また,個別に取り挙げていないvoirに関する凝結表現に関しても,言語学的分析を進めて行く予定である. コーパスの大きさに関する問題が残っているので,自身でコーパスの拡大を図るとともに,協力を得られるLDI研究所所有のコーパスも使用し,データとしても確実なものにする必要がある.
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外の研究者を招待する時期が変更になったことによって,旅費が予定より少なくなったのに加え,パソコンの購入を考えていたが,来年度に持ち越したことから,次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度購入しなかったパソコンの購入と,平成29年度も海外研究者を招くことを予定している.
|