研究課題/領域番号 |
16K16828
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研究機関 | 日本医療大学 |
研究代表者 |
山田 敦士 日本医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20609094)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ワ族 / リテラシー / テクスト / 雲南省 / 少数民族 |
研究実績の概要 |
計画初年度である平成28年度は、複数の文字表記が併存する中部地域(滄源県・耿馬県)を対象に、次の4点に関する調査研究をおこなった。 (1)ビルマ式表記に対するリテラシー状況の把握:滄源県の国境市場において、ビルマ式表記法に関する使用状況のインタビュー調査を実施した。その結果、中国側に居住するワ族、ミャンマー側から越境するワ族ともに、本表記に対するリテラシーが低い可能性が示唆された。 (2)各種文字表記による言語表象物の収集・分析:生活市場および店舗において、三種類の表記法(宣教師式、政府式、ビルマ式)による言語表象物の収集をおこなった。その結果、出版物等の流通はほとんど認められない一方で、テクスト以外の媒体による表象物(政府式表記法による公的な標識類・観光パンフレット、ビルマ式表記法によるDVD等の電子的な音声資料)の使用が認められ、その一部を収集することができた。 (3)宣教師式表記の識字教育の把握:滄源県内にある教会を訪問し、リテラシー教育の経年変化を知るための情報収集をおこなった。 (4)未報告地域での言語文化状況の把握:滄源県西部のいくつかの村落に居住するワ族支系に対する予備的調査をおこなった。「本人」または「本族」と他称されるこれら人びとは、滄源県の北側に位置する永徳一帯からの移住であり、文字使用を含めた言語文化は周辺地域よりも漢族的であることが判明した。言語動態の解明のため、引き続き調査を継続することとした。 以上の調査研究の状況報告、および新たに得られた知見について、学会および研究会にて発表(口頭、論考)をおこなった。また、学会の電子通信および出版社のWEB記事を通じて、アウトリーチ活動にも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた協力者の都合がつかず、別の協力者を招へいした。テクストの分析作業に若干の影響が出たが、調査自体は計画に沿ってすすめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って、調査研究をすすめる。新たに判明した支系集団については、地域の歴史文化動態の観点からきわめて興味深い。今後の研究の広がりが十分見込めるため、引き続き調査をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力者の都合により、音声資料のテクスト化に関わるネイティブ確認が終了しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
ネイティブ確認が終了したのち、研究成果の刊行(口頭伝承テクスト)をおこなう。繰越しの助成金は、刊行時の英文校正費用として使用を予定している。
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備考 |
駿河台出版社WEB「世界はことばでできている」にて記事連載 http://www.e-surugadai.com/surugadai-selection/surugadai-selection/rensai04
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