研究課題/領域番号 |
16K16832
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
渡丸 嘉菜子 上智大学, 理工学部, 研究員 (40735990)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 言語音声知覚 / 母語音声 / 外国語音声 / 音素としての許容度 / 英語弱化母音 |
研究実績の概要 |
本研究では、外国語の知覚と母語の知覚について、「母語の音素としての許容度」という観点から、統一した現象として捉える可能性について検討している。具体的には、(1)母語音声を知覚する際の、母語音声としての許容度の役割について調査する、(2)外国語音声において、音声の「母語の音素」としての知覚的許容度はどのような要因によって変化し、知覚に影響を与えるのか調査する、という計画である。ある音素が、言語音声のカテゴリーとして構築されているか否かについては、カテゴリー知覚という現象から観察する事ができる。カテゴリー知覚は、子音知覚に起こりやすいとされている事から、当初、子音に特化した研究計画を立て、進めていた。調査では、合成音声を母語・外国語としての許容度を測定させる上で、合成の質がその測定に影響を与える恐れがあった。そのため、そのような影響ができる限り最小限となるよう、刺激音の作成と方法、確認に十分な時間と慎重な検討が行われた。また、知覚に影響を与える要素を特定するため、なるべく単純な構造を持った音声を作成する計画を進めていた。結果、予備実験や予備調査を行うなどする過程で、言語音声としての許容度、および母語・外国語としての許容度の判断は、聞き手の音素知識だけでなく、個々の刺激音の特性(刺激音にどの母音を使っているか、および、フォルマント周波数等、刺激の詳細の数値の違い)にも影響を受けるという知見が示唆された。そこで、刺激の合成と平行して、許容度を正確に計る指標についても慎重に検討した結果、母音の知覚に基づく指標が有効であることが示唆された。そこで、本研究課題について、英語の弱化母音を日本人が知覚する際の知覚パターンに焦点をしぼり、日本語話者が英語の弱化母音を知覚するパターンについてと、母語としての許容度との関係を調査した。この成果については、投稿中の論文にて公表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、(1)母語音声を知覚する際の、母語音声としての許容度の役割について調査することを計画していたが、調査の過程で、母語や外国語音声の知覚に当初の予想とは異なる要因が用いられている事が示唆された。そこで、母語、外国語に関わらず、知覚の際に優先的に用いられていると思われる要因の特定とを優先することとしたため、昨年度の時点では進捗がやや遅れていた。しかしながら、最終年度において、調査対象を子音から母音へと改める等の計画変更を行い、先行研究や予備調査に基づく調査を進めたことにより、結果、「母語の音素」としての知覚的許容度に影響を与える要因として有効であると思われる指標が見いだせた。それにより、本研究の大きな目標としていた、「外国語と母語の知覚を「許容度」という観点から統一した現象としてとらえる可能性について検討すること」について、統一して捉えるのは妥当でありそうだ、という示唆が得られた。このような示唆が得られた事は、本研究の最終目標としていたところであり、成果としてはおおむね順調に進展している。調査結果と成果についても、学術論文にて公表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の調査によって得られた研究成果について、学術論文にて公表するべく、平成30年度は主に執筆と論文出版活動を続ける予定である。論文出版や、それに関わる追加調査に関する支出については、補助事業延長申請済みである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度(最終年度)に研究を遂行中、研究代表者の妊娠に伴う悪阻や、度々の通院などにより研究の遂行に想定外の遅れが生じた。当初の予定では、最終年度の調査結果を複数の学会で発表のち、論文として公表予定であった。しかしながら、体調の都合等により、学会発表の辞退や論文出版の延期が必要となり、補助期間内の予算執行が難しい状況となった。従って、延長せざるを得なくなった研究項目(主に論文の投稿および公表)に関わる費用(英語校閲、掲載費、および追加調査に関わる費用)を次年度に使用する。
|