研究課題
2019年度の研究においても、本研究課題全体のキーワードである「併合」という要素を組み合わせる演算を中心に研究を進め、言語能力、特に派生のメカニズムについて考察した。2019年度の研究では、まず、これまで行ってきた主に時制辞Tの指定辞要件、言い換えると、「節の主語要件」についての議論を掘り下げた。言語能力に対する極小主義アプローチでは、節の主語要件をTがラベルとして機能しないと仮定することで説明しようとしているが、これには経験的な問題がある。2019年度の研究では、昨年度の研究を発展させる形で弱いラベルと派生計算の関係について考察した。対併合がラベルの弱さを解決する一つの手段になること、そしてこの結果、併合が言語能力の中核をなすという仮説が支持されることを明らかにした。また、本年度の研究では、これまで文献の中で議論になっているA移動における移動の循環性の問題も取り上げた。本研究では併合の枠組みの中で、A移動の循環性が併合の適用の仕方により導かれることを明らかにした。こうした研究の中では、対併合が重要な役割を果たしているが、本年度の研究の中でこの対併合を単純併合の枠組みの中で再検討し、単純併合から導く可能性を追求した。今年度の研究では、対併合自体の研究については時間が限られていたため、次年度以降の研究の中で引き続きこの研究に取り組むつもりである。本年度の研究から得られた成果も、これまでの成果と同様に、派生計算において併合が重要な役割を果たしていることを裏付け、言語能力が併合をその中核演算として「強い極小主義の仮説」に基づいて機能し、インタフェイスとの相互作用の結果、言語現象を生み出していることを示すものであると考えられる。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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