日本語における漢語の研究は、個別の問題だけでなく、漢語全体にかかわるような理論化・体系化を視野にいれた研究もおこなわれるようになってきている。しかし、あつかう事象の体系性が比較的とらえやすいものだけでなく、個別の語史研究を総合し、抽象化することによって、語の意味変化の方向性という観点から類型化するという研究方法も必要であろう。 そのような問題意識のもとに、本研究では、語の意味・用法が変化する事例のうち、副詞用法を発生させたものを対象に、まずは個別の語史を考察する。そして、それを総合することによって、副詞の意味変化のありかたを類型化してしめす。また、それをもとに、漢語副詞の発達を、漢語の日本的変容の現象のなかでとらえなおすとともに、日本語における副詞の変化・発達の歴史における、漢語受容のはたした役割を考察する。さらには、そのような理論的総合を視野に入れた個別の語史研究のありかたを、方法論的に検討する。 当該年度は三年目であり、個別の語史研究を継続するとともに、評価的意味を発生させた副詞の語史をまとめ、副詞の意味・用法変化における評価的意味発生の過程と類型をまとめている。その際、外延を無理には設定せず、本研究期間内での個別の語史研究からわかったことをできるだけ一般化・抽象化した形でしめし、それらの間の関連をさぐることに主眼をおくものとする。そして、日本語における副詞の変化・発達の歴史における、漢語受容のはたした役割の考察をすすめている。これは、前年度の作業を継続するとともに、時間的意味・程度的意味・評価的意味の三者と漢語副詞の発達とのかかわりといった要素を含む形で、本研究期間内でのまとめをおこなうものである。
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