研究実績の概要 |
本研究は、子守歌詞章や日常言語における語・表現・テクストについての地域性と多様性を明らかにし、日常言語と口承文芸のかかわりを探るものである。当該年度に実施した項目は次のとおりである。 まず、研究計画のうち「1.子守歌詞章と育児語の地域的特徴・関連性の解明」については、これまでの東北地方での方言調査において収集した就寝にかかわる育児語と、それにかかわる表現(子どもへの評価、褒め、叱ることばなどの行動統制のための言語行動)の分析をすすめている。 また、「2.育児場面の言語行動の調査と地域的特徴・関連性の解明」においては、東北・近畿地方を中心に言語行動調査を実施し地域差のありかを捉える。当該年度は東西の中間に位置する愛知県の言語行動の調査を行い、「名古屋弁らしさのありか―円頓寺界隈の生活伝承とことばの聞き取り」(『人間文化研究所年報』 15 号,pp69-72, 2020年3月)に、言語行動の東西差を踏まえたうえでの愛知の地域性について示した。 また、「非難の言語行動の特徴―要素とその出現傾向の場面差に着目して―」(東北大学方言研究センター編『生活を伝える方言会話[資料編・分析編]』ひつじ書房,2019年10月)を執筆した。 「3.子守歌以外の口承文芸のテクストの分析と地域的特徴・関連性の解明」については、前年度に続き、北原白秋編『日本伝承童謡集成第二巻―天体気象・動植物唄篇』(三省堂)などを分析対象として論文を執筆している。 以上に加え、子守歌詞章と、日常言語としての子どものことばとの関連性を見出すこと、また、言語芸術と子どものことばとの関連性を探るために、子どものことばがけや物語創作にかかわる調査・分析・発表を行った(「幼稚園における物語創作サイコロを用いた言語表現活動の意義と可能性」,中部教育学会『第68回大会 自由研究発表要網集』2019年7月)。
|