研究課題/領域番号 |
16K16848
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研究機関 | 関東短期大学 |
研究代表者 |
中野 真樹 関東短期大学, その他部局等, 講師 (30569778)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本語点字 / わかちがき / 語種比率 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語点字文章ならではの表記特性(かな専用文、わかちがきを行う)と、公用文で用いられる日本語墨字文章の表記特性(漢字かなまじり文、わかちがきを行わない)とで、かきだされた文章にどのような語彙的な異なりがあらわれるのか、そしてその相違によって、日本語文章理解にどのような差異がどの程度みられるのか、という点に着目して、日本語点字文の語彙・表記研究を行っている。 はじめに、点字表示用のテキストファイルを、端末機「ブレイルセンス」を用いて触読を行い、点訳された一般書の点訳注用例の採取を行ったところ、点訳注の出現は限定的であり、計量的な研究としては、語種比率の比較に重点を置くべきであるという結論がでた。具体的には、同音異義語が多く漢字を用いないと文章理解にさまたげが生じると信じられてきた漢語が、かな専用文である点字文では実際にはどの程度の頻度で現れるのか、墨字文との間に有意と言える差が生じるのかについて、新聞記事を用いて計量的な分析を行ってくこととする。 また、かな専用文の文章理解におけるわかちがきの作用については、まずその成り立ちと概要を明らかにするため、学校文法との関連を中心に各時代のわかちがき法書の比較を行い歴史的な変遷をあきらかにした。その結果、日本語点字がかな専用文としてつかわれはじめた明治期からその骨子といえる部分は共通しており、その時代の学校文法に準拠した文節わかちがきを用いていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では3つの点に着目して研究を進めている。1点目は、墨字文を点字に翻字したときにあらわれる点訳注について、どのような語にそれが付与されているかを調査する。2点目は、実際の墨字文と点字文に現れる語彙特性について、計量的に調査を行うというものである。3点目は、以上2点の語彙特性をふまえて、点字のわかちがき法が文章理解におよぼす影響について、調査を行うというものである。しかしながら、1点目の点訳注についての調査ではあまりはっきりとした特性といえるようなものを掲出することができなかった。そこで、今後は語彙特性についての調査を重点的に行う必要があるため、研究計画をやや変更する必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、点字と墨字の新聞記事の語種比率を中心に、語彙特性の研究を行っていくことで、点字文と墨字文との語彙・文体的特性の差を明らかにしていくこととする。具体的には、漢語を中心に語種の比率について、かな文と漢字かなまじり文では差異があらわれるのか、あらわれるのであればどの程度なのかという点について、あきらかにしていく。また、それをふまえて点字文と墨字文との相互の翻字がより容易となっている日本語文について提案を行っていく予定である。 また、それを踏まえて、新造された漢語複合語や、モーラ数の多い外来語等のわかちがきの今後の在り方について検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
点訳注の使用例に関する研究のプレ調査を行ったところ、有意な結果が得られず、研究計画を変更した。そのため、作業補助謝金等の当初の予定していた人件費および学会発表などを執行することができなかった。研究計画を見直し、次年度に行うつもりであった新聞の点字資料を用いての語種比率の研究を重点的におこなうこととし、その準備に入ったため、予定通りの予算使用ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画を見直し、28年度に行う予定だった点字テキストデータの調査をあらためて行う。その際、点字の触読およびテキスト化を行うことができる作業補助者への謝金について、平成28年度に執行予定だった予算をあてる予定である。
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