中・近世語における複合辞・連語形式については、個別形式に関する研究はなされているものの、その全体像が明らかにされているとはいいがたい。本研究は、以下の二点を目的としている。 (1)中・近世語資料における複合辞および連語の使用状況を、国立国語研究所の『日本語歴史コーパス』およびその形式に準じて追加作成したデータを用いて計量的に検証すること (2)(1)で得られた結果をもとに複合辞・連語の研究を行うこと 平成30年度は、引き続き『虎明本狂言集』における複合辞・連語の分析を進め、同時に、『日本語歴史コーパス』の形式に準じた追加データとして、『虎寛本狂言集』のデータ作成を行った。その上で、これらの資料にみられた複合辞・連語と、キリシタン資料をはじめとする他資料にみられる複合辞・連語との比較を行った。具体的には、これらの資料のコーパスデータに付与された形態論情報を利用し、それぞれの資料について2~7語の単語(短単位)N-gramデータを抽出した。このN-gramデータを出現頻度・出現環境・文法的機能・意味の希薄化等の観点から整理し、複合辞・連語リスト作成のための分析を行った。さらに、資料ごとの複合辞・連語の出現状況から、各資料の特徴を検討した。また、複合形式の計量的研究手法の確立を目指し、国立国語研究所のBCCWJ(現代日本語書き言葉均衡コーパス)のデータを用いた複合辞の研究を行った。 本研究の成果については、日本語学会(春季大会)での発表や『国立国語研究所論集』、『新しい古典・言語文化の授業―コーパスを活用した実践と研究―』(河内昭浩編・朝倉書店)掲載の論文等にて公開した。
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