日本語の「てしまう」構文と英語のGet受動文に観察される話者の否定的感情表出は、両構文がもつ結果指向性というアスペクト的性質から生じる「発生済みで変更できない事態である(事態の不可変性)」という含意(entailment)が、文脈による推論を経て表出されるというモダリティ発生のメカニズムを明らかにした。事態の不可変性というアスペクト的性質とモダリティ表出の相関性について検討することで、完了・結果指向構文におけるモダリティの表出は、構文のアスペクト性によって含意される事態の不可変性が、語用論的推論によってモダリティ表出、つまり、話者の感情の表出を引き起こしていると言える。
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