研究実績の概要 |
本研究は、近代英語期を未来表現体系の再整理が生じた時代と捉え直すことで、英語未来表現の史的研究に新たな視点を提供することを目的としている。当初の計画では、2年目に当たる平成29年度は、近代英語期に出版された英訳聖書の調査を土台に、他のテキストジャンルにも調査を広げる予定としていた。 平成29年11月に開催された日本英語学会では、「英語史における定型表現」というシンポジウムを企画し、「初期近代英語における近接未来表現の消長」のタイトルで講師を務めた。Shakespeare、『欽定訳聖書』、Marlowe、Nashe、Lylyを対象にし、初期近代英語のテキストにおける近接未来を指す各表現 (be about to, be going to, be on the point of, be ready to, go near to) の競合関係を探った。これらの表現のうち特に使用の多かったbe about to, be on the point of, be ready toを「構文化」(Traugott and Trousdale 2013) の観点から扱い、be ready to, be on the point ofは構文化が進行した一方でbe ready toはそうではなかったこと、その結果be ready toは文法化した用法が定着するには至らなかった可能性を提示した。 計画立案時には予想していなかった「うれしい誤算」であるが、平成29年度には、初期近代英語を中心にしたコーパスEarly English Books Online (Davies 2017) がウェブ上で公開された。すでにここから集めたデータを元に調査を始めている。
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