2018年度は、大学・大学院に在籍している中国人私費留学生と日本語学校に在籍している中国人学生を対象に、アルバイトの目的とアルバイトの肯定感、及び将来のキャリア意識について質問紙調査を実施した。 大学・大学院生103名と日本語学校生68名のデータを分析対象に統計的手法を用いて分析した。分析の結果,アルバイトの目的として『経済的理由』『日本社会・日本人との交流』『心理的満足』『消極的理由』の4因子が得られた。また,アルバイトの肯定感として『自己成長』『将来のキャリアへの認識』『日本語能力の向上』『日本人の職務態度についての学び』『金銭の獲得』『ネットワークの構築』の6因子が抽出された。さらに,将来のキャリア意識として『中国・日本関連企業への就職志向』『起業志向』『第三国志向』『日本での就職志向』『将来不透明性』の5因子が得られた。両者の関連については、『日本社会・日本人との交流』など、日本社会との接点や日本人との交流を求めアルバイトに従事する場合、アルバイトの肯定感のすべての因子に影響を与えており、地域社会との接触や地域の日本人との交流の重要性が示唆された。また、『心理的満足』など、自己決定程度の高い目的を持つ場合、『自己成長』『将来のキャリアへの認識』『日本人の職務態度についての学び』『ネットワークの構築』を肯定的に捉える傾向が見られ、内発的動機を持ってアルバイトに従事することが重要であることが示された。さらに、『日本での就職志向』を持っている場合、『将来のキャリアへの認識』『日本人の職務態度についての学び』『ネットワークの構築』を肯定的に捉えており、アルバイトの経験を通して得た日本人の職務態度や職務スタイルの理解、アルバイト先で構築されたネットワークを肯定的に捉える様子が窺えた。
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