研究実績の概要 |
本研究の目的は、RI-Val processで提案されている3つのプロセス(活性化、統合、妥当性)に基づき、L2学習者の推論生成プロセスを検証することである。本研究で研究対象とする推論は、要点や主題といった包括的な理解に必要不可欠な役割を果たす。例えば、“It was very late when the secretary got home and she took off her clothes, put on pajamas and turned off the light. In her dream, she saw the famous actor she always wanted to meet.” という文を読んだ際、読み手は2文間の理解の一貫性を保つために “She went to bed.” という推論を補いながら理解する。このような推論は局所的推論 (local inferences) と呼ばれ、隣接する文と文の情報 (i.e., 読み手のワーキングメモリー (WM) に保持されている情報) を結び付けて生成されるため、L2 学習者であっても読解中に比較的生成できることが分かっている)。一方、情報間の距離が離れていたり、文章全体から総合的に考えなければ理解できない場合、WM内に以前読んだ情報を再活性化する必要がある。このような推論は大局的推論 (global inferences) と呼ばれ、まとまりをもった英文の読解を成功させるためには極めて重要となる。 平成29年度は予定を前倒しして、妥当性プロセスの検証を行った。これは申請者の以前の研究の再現性を確認するためであった。協力者38名を英語習熟度によって2群(上位群・下位群)に分け、推論の生成度合い(意味的関連性:高・低)を2段階設定し、日本人英語学習者の局所的推論の生成の有無を矛盾パラダイムを用いて検証した。分析の結果、日本人英語学習者の局所的推論の生成は確認できなかった。この結果は、申請者の以前の研究結果とは矛盾しており、現在は研究協力者とその原因について考察中である。
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