平成29年告示の小学校学習指導要領において,外国語が教科化された。従来の聞くこと・話すことといった音声中心の外国語活動が小学校3・4年生から始まり,5・6年生ではそれに読むこと・書くことを加えた体系的な学習が行われることになった。学習者が母語以外の言語で読解を行う際には,第二言語 (L2) の語彙や統語といった処理に躓き,深い理解に至らないということが課題となる。そこで,読み手の深い理解の構築に貢献する推論に着目し,L2読解における推論プロセスの検証を行った。本研究の目的は,英文読解における推論の生成に関わる3つのプロセスに基づき,L2学習者の推論生成プロセスを検証することである。本研究では局所的推論と大局的推論を扱った。 最終年度は,読解後の推論生成に焦点を当て,日本人EFL学習者のテキスト読解について検証を行った。意味的関連性の要因およびテキストの長さを操作した4条件の英文テキストを用意し,参加者27名に対しテキストの一貫性についての評価を求めた。分析の結果,4条件間に有意差はなく,参加者は60-74%の確率で矛盾を検出できていることが示された。しかし,矛盾があると回答した場合にその理由を適切に指摘できていたかどうかを検証したところ,意味的関連性の主効果が見られ,意味的関連性の低いテキストでは矛盾を検出できても,英語学習者はその理由を適切に把握できていないことが示された。また,質的な分析から,英語学習者の場合,矛盾の根拠とする情報の範囲がtarget文だけに留まらない傾向があった。このことから,英文読解における推論生成では英語母語話者が矛盾を確信するよりも遅いタイミングでそれに気づいたり,テキストからより多くの情報を得てから矛盾を導く傾向にあることが示唆された。
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