研究課題/領域番号 |
16K16881
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
今井 純子 順天堂大学, 国際教養学部, 助教 (00458506)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ライティング・カンファレンス / 個別英語ライティング指導 / 第二言語ライティング / 学習メカニズム / 自立学習支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、大学英語教育における自律学習支援システムの構築を目的とし、作文の個別指導であるライティング・カンファレンス(WC)での学習メカニズムと支援ストラテジーを解明しようとするものである。申請者はこれまで、アメリカの大学において、第二言語として英語を使う日本 (及び他国) からの学生と応用言語学を専門とする大学院生チューターとの間で開かれWCを観察してきた。本研究では、それらのデータの量的・質的分析に基づき、日本の大学生 がWCについて明示的に学ぶ場を提供する。 2年目にあたる29年度は、1年目に行った量的・質的データ分析の結果から、本調査で焦点を当てるチューター・チューティーのペアをケースとして絞り、談話分析を進め、WCにおける支援者・学習者パフォーマンスとその変化・ケース間の違いを詳細に探索した。一方で、研究実施先で、授業外の自律学習支援として、学内にライティングの個別指導コーナーを設けた。具体的には、個別指導のスケジューリングや教材配布、利用アンケートの実施を目的としたオンラインサイトを作成し、希望者を対象に支援の提供の試験的な運用を開始し、サービスを利用した学生から概ね満足の声を得ることができた。 1年目に続き、データ分析の途中経過と解釈についてハワイ大学の研究協力者と定期的に意見交換を行った。また、2年目の成果 (質的・量的分析結果、代表的ケース)について、国際応用言語学会 (AILA)、第二言語ライティングシンポジウム (SSLW)、国際言語学会 (ISLS)、全国語学教育学会 (JALT)で発表した。本研究が対象とする大学英語教育の文脈と学びの実態について、大学紀要で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度は、3年目の本調査にむけて、研究実施先での教育実践 (ライティング個別指導コーナーの設置)とカリキュラム単位での予備調査(質問紙・作文テスト) を予定していた。しかしながら、想定外の事情により、予定よりも小規模な個別指導コーナー開設となった。また、予備調査の対象としていた大学1・2年の英語カリキュラムで、当初大部分を占めていたライティングの授業が、学年の途中で他スキルへフォーカスを変更されるという、予期していなかった出来事が続き、変更に伴う教育的配慮から、カリキュラムや授業を単位とした実施先での協力と予備調査が不可能となった。一方で、1年目に分析しきれなかったデータの分析をさらに進める時間を取ることができたため、新たに解明できたことも多く、また成果発表や実施先教員との情報共有の場を得ることはできたとはいうものの、上記の理由から、「順調に進んでいる」とは言えないため。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査・本調査での実施先での英語カリキュラム全体への協力要請を断念し、規模の縮小と対象者の拡大という変更をして研究を進める。具体的には、予備調査として、30年度前半に、英語論文の書き方を扱っている上級生向けクラスの教員・受講者と英語での卒業論文の執筆を予定している学習者に協力を仰ぎ、学習者とその指導者に作文・映像・談話データの一部をサンプルとして提示し、小グループでの議論の様子や振り返りを記録する。予備調査を元に、個別支援の活用を促す学習者トレーニングのモジュールを開発する。30年度後半には、本調査として、2年目に試験的に運用を開始したライティングの個別指導コーナーの利用対象者を、大学1・2年生のみでなく、実際に卒業論文に向けて英語論文を書き進めている大学3・4年生に拡大し、サービス利用者に本調査への協力を募る予定である。研究の経過報告を第二言語ライティングシンポジウム、大学英語教育学会、第二言語リサーチフォーラム (SLRF)等で発表する。また、これまでの研究成果を学術誌や学会誌に投稿し、報告書としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初29年度後半に予定していた予備調査に大幅な遅れが生じ、それに伴い、データ分析に必要なソフト等の物品購入、報告書の執筆、テープ起こし・英文校正作業等の発注も遅れたため。遅れていた予備調査を、対応策を元に早急に進める。最終年度に向け、繰越額を含めた翌年度分は、予備調査と本調査で新たに集めるデータの分析と報告書作成のために使用予定である。
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