研究課題/領域番号 |
16K16886
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
劉 驫 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (00756223)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 機能語 / 誤用分析 / 教育文法 / 教授法 |
研究実績の概要 |
中国語教育における文法説明は、中国語学や対照言語学の既存成果に大きく依存している。しかし実際のところ、学習者にとって各項目の意味・機能には難易度の差が見られており、従来の成果だけでは十分に説明できないと考えられる。このため、日本語話者専用の中国語教育文法を構築することは喫緊の課題となる。 この問題を解決するため、本研究はまず、教育の難点とされる機能語に焦点を当て、同じ機能語の異なる機能の習得難易度を推定する。次に、日本語話者が効率良く中国語を勉強するために、機能語の教育文法に関する体系的な記述を行い、より効果的な教授法の実現に研究成果を応用する。 一般に、中国語学習者にとって内容語より機能語のほうが難しいとされる。その中でも特に難しいとされるのは、「了」、「着」、「過」などの助詞と、「就」、「才」などの副詞が挙げられる。これらの助詞・副詞の誤用には「混同」、「位置」、「脱落」などさまざまなパターンが顕著に見られる。 平成28年度では、初修中国語学習者(約100名)を対象として集団テストを実施した。そこで「位置」、「混同」、「脱落」、「付加」、「その他」など5つの誤用パターンから観察した結果、「了1」の機能1「動作の完了」の場合、「混同」と「脱落」の誤用パターンが非常に多く観察され、機能2「従属節に用いて未来完了を表す」の場合、「脱落」が一番多く、二番目に多いのは「位置」であった。「了2」の場合、機能1「変化」と機能2「状況確認・報告」には同様な傾向が見られ、「脱落」が最も多いが、二番目に多いのは「混同」であった。紙幅の制限上、ここではその他の機能語に関する観察結果を省略する。 本年度の観察結果に対して、平成29年度においては、なぜこのような結果になったのか、その理由を考察する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成度に関しては、おおむね順調に進展しているといえる。従来、中国語文法教育において、同じ機能語の異なる機能の習得難易度は、それほど注目されてこなかった。この問題を取り上げ、大人数のクラスにおいて横断的調査を通して、実験結果の一般性と信頼性を高めることができ、収集されたデータはより健全な学術的結論に導くことが可能になる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度においては、実験から得られた観察結果に対し、記述と理論の両面において、学習者の機能語の使用実態と、母語の日本語との関連について考察を行う。同時に、研究の成果を学会等において発表し、論文としてまとめ学術雑誌に投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、旅費と人件費の支出が予定より少なかったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度では物品費に使用する予定である。
|