本研究の目的は,日本語のモノの数え方(助数詞)を題材に,第二言語の語の使い分け方に及ぼす母語の影響と学習環境の影響を調べる点にある。また,日本語を第二言語として学ぶ人たちが日本語の助数詞を的確に使い分けるにはどのような学習プロセスを経る必要があるのかを解明する点にある。 調査1では、まず日本語の助数詞が数えるモノの形や大きさによってどのように使い分けられているのかを探索するために、日本語話者を対象に助数詞産出課題を行った。具体的には、動物やモノの写真を提示し、的確な助数詞を1つ答えてもらった。 続く調査2では、第二言語として日本語を学ぶ人たちが日本語助数詞をどのように使い分けているのかを調べた。具体的には、日本の大学で日本語を第二言語して学ぶ中国人留学生(もしくは韓国人留学生)を対象に、助数詞産出課題を行った。刺激材料には、生物助数詞(例、匹)と形状助数詞(例、本)、そして機能助数詞(例、台)で数えるモノの写真を使用し、最終的な刺激リストは調査1の成果を基盤に作成した。また、日本語の熟達度レベルを測るために、口頭模倣テスト(日本語の文を音声として聞く→3秒ポーズ→日本語の音声を出来るだけ正確に復唱する)も実施した。 研究成果をまとめると、(1)日本語の熟達度レベルが高い学習者でも日本語母語話者とは異なる運用の仕方を見せること、(2)ただし、すべての助数詞が同じように難しいわけではなく、同じ助数詞なかでも学習しやすいものと、学習しにくい助数詞が見られること、(3)日本語の熟達度レベルや日本での滞在期間の長さは日本語助数詞の運用の仕方にはあまり関係性が見られないことがわかった。 今後の方向性には、産出だけでなく理解も射程に入れて日本語の助数詞の知識に迫る点、母語話者と学習者の運用基準の違いをより詳細に解明する点、異なる教授法を比較し、学習プロセスに直接影響を及ぼす要因に迫る点がある。
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