研究課題/領域番号 |
16K16893
|
研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
野上 陽子 松山大学, 経営学部, 准教授 (90733999)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 語用論的言語運用 / 第二言語に関するアイデンティティ / 留学 / 国際共通語としての英語 / Lingua Franca / 異文化間コミュニケーション |
研究実績の概要 |
申請者の所属機関で被験者が集まらなかったため、申請者の個人的なネットワークと広島修道大学竹井光子教授の協力を得て、広島修道大学在籍の長期留学へ向かう学生の紹介を受け、計3名の被験者を得た。被験者の研究参加の承諾を得た後、解釈的方法をとる質的調査で重要となる研究者と被験者とのよい人間関係の築きのために、各被験者との事前交流を取る機会もとった。これに並行して、本研究開始に伴う被験者への研究全体の説明書及び同意書、ナラティブ研究法の日記観察の協力者へのインストラクションを作成した。また、研究協力者留学前に行なう調査の資料として、背景調査アンケートと語用論的言語運用に関するアンケート、事前インタビューで調査する項目表を作成した。 被験者の内1名は平成29年3月頭より留学先へ向かったため、1月~2月にかけて留学前の背景調査、語用論的言語運用に関するアンケート調査、事後インタビューを実施した。また留学先で被験者が日々、どのようなインタラクションにどの程度参与しているのか、またその際に彼/彼女らが何を感じ、何を考えているのかを自らの視点から明らかにし、アイデンティティの構築への影響を調査するナラティブ研究としての日記観察も3月より開始した。残り2名の被験者は平成29年度8月より留学へ向かうため、それに応じて、留学前アンケート調査、インタビュー調査、ナラティブ研究の開始は29年度前半に持ち越しとなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は被験者の募集をし、1)留学前の英語への意識やidentityについての考察、2)留学前の語用論的L2運用とidentityの関連についての調査、3)留学中のidentityの構築に関するnarrative研究、及び4)談話研究+回顧的インタビュー調査の準備を整え、開始する予定であった。うち、研究実施の準備として、被験者への研究説明書・同意書の作成、また上記1)と2)に関する背景調査アンケート、語用論的L2運用を調査するアンケート、事後インタビュー質問項目の作成、上記3)に関する日記観察の被験者への指示文の作成を終えた。 最終的に計3名の被験者を確保し、内1名は平成29年3月より留学へ向かった。その時期に合わせて、留学前に行なう研究1)と2)に関するアンケート調査とインタビューを実施した。また留学開始後に上記3)に関する研究の日記観察を開始し、現在進行中である。被験者の留学開始時期が平成28年度終わりから平成29年度中期となるため、それ応じてデータ収集の時期を本研究計画書に記述した予定よりずらしている。よって進捗状況としては予定より「やや遅れている」が、研究自体は順調に進展をしている。 研究発表に関しては、データが未収集のため分析結果に基づく研究発表は行っていない。しかし、本研究課題の基盤となる共通語としての英語・日本語(English/Japanese as lingua francas)に関する研究に関し報告などを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
概ね当初の計画に則って計画を推進する。平成29年6月末から7月にかけて、被験者2名(8月から留学開始)の留学前アンケート及びインタビュー調査を行なう。また両被験者留学開始後にナラティブ研究の日記観察を開始する。平成30年1月から3月にかけ、各被験者の留学中のidentityの構築に関する談話研究(被験者が参加する会話の録音・録画)、及び回顧的インタビューを行なうため、全被験者3名の留学先(チェコ、コスタリカ、アメリカアリゾナ州)へ渡航を予定している。本来の研究計画書には、被験者の留学中の談話研究と回顧的インタビューを留学初期と留学後期に分けて2度行なう予定であった。しかし、被験者の留学先がそれぞれ異なる国となったため、各留学先に2度渡航しデータ収集するのは困難だと考える。よって談話研究はそれぞれ一度とし、留学中のナラティブ研究の日記観察終了後に事後インタビューを行い、それぞれの言語運用の意識変化を考察する方法を加える予定である。 長期横断的ケーススタディーのため、データに基づく有効な分析結果の発表は平成29年度には可能ではない。そのため本研究課題の基盤となるEnglish as a lingua franca や第二言語に関するアイデンティティの研究を進め発表を行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していたデータ収集の為の被験者の留学先へ渡航が平成29年度に延期となったため、外国旅費として計上していた費用が次年度への持ち越しとなった。それに伴い被験者への謝金、音声データの書き起こし謝金、研究補助の謝金も一部を除き次年度へ持ち越しとなっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
被験者の留学先へ渡航してのデータ収集を平成29年度の後半に計画しており、持ち越しをした費用を使用する予定である。
|