研究課題/領域番号 |
16K16897
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
及川 琢英 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30553036)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 満洲国軍 / 張作霖 / 馮徳麟 / 馬賊 / 陸軍士官学校留学生 / 軍事顧問 / 満系軍官 / 日系軍官 |
研究実績の概要 |
交付申請書中の「平成28年度の研究実施計画」に概ね基いて本年度の研究を遂行した。 第一に、日露戦争期から辛亥革命期において、後に満洲国や満洲国軍に関係することとなる人材と日本との関わりを考察した。具体的には、1.日露戦時の張作霖や馬賊勢力と日本軍の特別任務班に関する史料、2.清国軍内における張作霖・馮徳麟に関する史料、3.辛亥革命下の張作霖、馮徳麟、陸軍士官学校留学生に関する史料を収集し、検討した。以上の作業をもとに論文としてまとめ、拙稿「日露戦争期から辛亥革命期の奉天在地軍事勢力―張作霖・馬賊・陸軍士官学校留学生―」(白木沢旭児編著『北東アジアにおける帝国と地域社会』北海道大学出版会、2017年、第2章)として刊行された。 第二に、1920年代張作霖・張学良期の東北軍、満洲事変と満洲国軍の創設に関して考察した。具体的には、1.1920年から31年満洲事変までの奉天軍に関する史料、2.満洲事変と在地勢力の帰順に関する史料、3.満洲国軍事顧問の動向に関する史料を収集し、検討した。以上の作業をもとに論文にまとめて投稿し、拙稿「『満洲国軍』創設と『満系』軍官および日系軍事顧問の出自・背景」(『史学雑誌』第125巻第9号、2016年9月)として刊行された。 第三に、1930年代以降、満洲国軍がどのように発展していったのかを考察した。具体的には、1.東北軍から帰順した満漢系軍官に関する史料、2.モンゴル系軍官に関する史料、3.中下級軍官、満洲国軍官学校生徒に関する史料を収集し、検討した。以上の作業をもとに論文にまとめて投稿し、拙稿「『満洲国軍』の発展と軍事顧問・日系軍官の『満系』統制」(『北大史学』第 56 号、2016年12月)として刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画通りに日露戦争期から辛亥革命期の研究を進め、論文を刊行させることができた。計画では次に1910年代の張作霖による東三省支配確立期の考察を進める予定であったが、1920年-40年代の時期に関する研究が予想以上に進展し、2本の論文を刊行することができた。1910年代の張作霖と奉天省に関しては、計画を練り直す必要があった。張作霖による奉天省支配確立期とその後の東三省支配確立期に時期区分し、考察を進めている。奉天省支配確立期に関してはすでに研究が進み、論文がまとまりつつある。 また1940年代の満洲国軍の対外作戦に関しては、ノモンハン戦争と合わせて考察していく予定であるが、ノモンハン関係の文献収集は順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、第一に、張作霖の奉天省支配確立期に関して、1.辛亥革命下において張作霖および馮徳麟はいかに勢力拡大のきっかけを掴んだか、2.趙爾巽・張錫鑾奉天都督(将軍)期において張作霖・馮徳麟は北京政府に対抗しつつ、いかに勢力の維持拡大に努めたか、3.袁世凱の帝制、第三革命下において張作霖・馮徳麟はいかに「奉人治奉」の実現へ歩みを進めていったのかを考察し、論文の刊行を目指す。 第二に、張作霖の東三省支配期に関して、東三省の軍事情勢、奉天軍の人材構成、張作霖と北京政府の関係、日本の東三省政策などに関する史料を収集し、検討したい。 第三に、1940年国兵法の成立以降、満洲国軍の崩壊までの時期を対象に、対外作戦への動員や「満系」・モンゴル系将校の反乱に関して明らかにする。満洲国軍の対外作戦補助部隊化の展開については、モンゴル系部隊が出動した外征作戦(華北・ノモンハン)と合わせて分析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、初年度ということもあり、史料調査の前に、入手しやすい書籍や論文の収集に傾注したため、旅費が少なかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、史料調査のための旅費に使用すること、海外文献の翻訳のための謝金として使用することなどを計画している。
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